マギ2

□審判(カシアリ)
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※学パロ


 やけに夕焼けの色が濃い日だった。
 屋上に流れる少しだけひんやりした風には、寄りかかった鉄柵の錆臭い匂いが混じっている。
 ふと血を連想した。
 爛れた患部のような真っ赤な夕日が目に痛い。
 だからアリババはあんなに泣き腫らした目をしているように見えたんだろうか。それとも本当に泣いていたんだろうか。

 ――……どっちでもいいか。

 俺は一歩踏み出して、向かい合ったアリババの影を踏んだ。


「そんな顔してそんな話して、何?俺にどうして欲しいわけ?」

 俺の事が好きだ、と言ったアリババはそれ以上は言葉を発しまいと自制するように唇を噛んでいる。
 しかしその顔は、ぐるぐると目を回し、今にも気絶しそうだった。明らかに気分が悪いようである。
 これが恋煩いってやつか?
 こんなに周囲が赤い中でもアリババの顔は尚赤いのだ。

「どうって……言われても……」

「何かして欲しいんじゃねぇの?いいぜ、別に」

 震えている肩に手を置き、噛み痕の残る唇へ甘く舌を這わせば、びくりとアリババは体を強ばらせた。

「――……ッ!」

 温かい背徳感……。

 ――だがそれは一瞬の事だった。



 ドガッッ!


「……ってぇな……」

 ジーンと左頬を中心に広がる痛み。
 頬骨に罅が入っていてもおかしくないくらいの本気の一発を見舞われ思わず呟いた時、赤く錆びた味がした。

 アリババは信じられないという顔で拳を作ったまま震えている。
 そりゃあそうかもしれない。俺だって、この感情をどう表現していいのか分からないんだから。

「……俺、お前のそういうとこほんっと嫌い!大っ嫌い!」

 ――さっきは好きって言ってただろうが。

 睨み合ったまま、俺もアリババも動かずに喋りもしなかった。そうしているうちに息をするのもつらくなる。

 ただ許し難い――こんな俺も、お前も。

 嗚呼…………






 おしまいだ。






 やがて何かに耐えかねたように、アリババは屋上から走り出て行った。
 そうだな。
 此処冷えてきたし。
 お前、俺の事嫌いだし。
 俺はお前の事――――


 恋はもっとくすぐったいものだと思っていた。
 こんなにドロドロ濁ってなくて。
 吐き気のような衝動じゃなくて。
 何もかも奪ってしまいたくなるような、きっとこんなんじゃない。……そう赤い目をした俺も思っている。



(……俺だって嫌いだよ。ばーか)

―――――
審判(永劫):復活 位置の変化 更新 結果


アンケの「友達→恋人」を参考にさせてもらいました!

意地でもアリババを好きって言わないし、むしろからかって痛い目見ちゃうくらいアリババ大好きなカシム///

これまでの二人って、トラウマになりそうな出来事でやっと自分の気持ち自覚してるようなので、友情→恋心もきっとそうだろうなと。

甘いエピソードより、見てるこっちが「うわぁあぁああ」ってダメージ食らうようなのが私的にリアルなカシアリなのでこうなっちゃいましたが、ご希望からズレてたらすみません^p^


2013.3.31

 

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