NOVEL

□濃緑の手袋
1ページ/2ページ

人通りの多い街の広場の噴水の前にフェルトはいた

あの最後の戦いから1年

アロウズを倒しトレミーのクルー達はみんな別れた
今でもトレミーのメンバーと連絡を取っているが、
でも特に彼と会うのはかなり久し振りだ


「悪りぃ、待ったか?」


そう言いながらロックオン…ニールが駆け寄ってきた


「ううん。今来た所だから…」


そう言いながらニールに近づく


「久しぶり、ロックオン」

「久しぶり、フェルト」



濃緑の手袋



ニールの「じゃあ行くか」という言葉に従って街を歩く

ニールは5年前の戦いの敵の攻撃でGNアームズの爆発に巻き込まれた
それにぎりぎり間に合った刹那が助けたことでニールは一命を取りとめることができたけど、
右目の怪我は再生治療をしても視力が戻らないほど悪化してしまった

それが元で5年前のあの戦い以降ニールはガンダムマイスターから外され、
エージェントとして支えてくれた

でもエージェントと実行部隊のトレミーのメンバーとの接点なんて
トレミーの補給の時と情報交換をするときぐらいだ

それを考えればこうやってちゃんと会って話すことにいたっては
5年ぶりと言ってもいいのかもしれない


「フェルトは何か見に行きたい所はあるか?」

「え?」


突然ニールに声をかけられて少し驚く
そしてそれをごまかすように辺りを見回す


チカッ…


視界の端で何かが光った
それに視界を合わせる

そこには小さな店があった

ショーウィンドウにはガラスの置物が飾られている
さっきの光はこれだったのだろう


「ロックオン、あのお店覗いてきていい?」

「いいぜ」


私はニールと一緒にお店の中に入る
そこは雑貨屋さんだった

かわいらしい小物がたくさん並べられている
小物以外にも、これはペンダントトップだろうか
細長い銀色の板に青や緑、オレンジや紫などの小さい石が1つついている

それからこれはカレンダーだ
中に仕掛けがしてあってボタンを押すと音楽が鳴るようになっている


これは…


私はある物を見つけた
近くに置いてあった買い物カゴを手に取ると
それをカゴのなかに入れた

ついでに見ていていいと思った物も全部カゴの中に入れる


ニールは…


インテリア用の雑貨を見ていた


私はニール気づかれないようにお会計を済ませて
それをプレゼント用に包装してもらう


それから私達は店を出た後
一緒にお昼を食べに行ったり、洋服を見に行ったりした


5年前のあの時はまさかニールと2人でこんな風にデートをするなんて思ってもいなかった
いや、今こうしてデートをしているのに夢を見ているような気分だ
それも、パパとママの夢だった戦争を根絶した世界で…

そう思うとこれがとても幸せなことなんだと思う
でもそれも終わりが近い
さっきまで青かった空がもうオレンジ色に染まっている

楽しい時間ほど早く過ぎるとはよく言ったものだ


「ありがとう、フェルト。今日は楽しかった」


ニールが別れの言葉を言う


「うん、私も楽しかった」

「それから…これ、よかったら貰ってくれないか…?」

「今日のお土産ってことで」っと言いながらニールが
きれいにラッピングされた小さい袋を私に差し出す

私はそれに少し驚きながらそれを受け取る


「開けていい…?」

「あぁ」


その言葉を聞いて私は袋を開けた

中に入っていたのはヘアゴムだった
ピンクのビーズが飾りとして付いていてキラキラ光っている


「きれい…」

「今日寄った店で見つけて似合うかなって思ってな」

「それにフェルト髪長いから使うだろ?」っと言葉が続く


「ありがとう、ロックオン」

「いや…」


私は自分が笑顔になっていることを感じた


「私もロックオンにこれあげる」


流れに任せて雑貨屋さんで買ったプレゼントを差し出す

するとニールはきょとんとした顔になって
「貰っていいのか?」っと聞き返してくる

私がその言葉に頷いて返すと
プレゼントを取って「開けていいか?」っと言った

私はまた頷く

ビリビリと紙の袋がシールで破ける音がする


「手袋…?」


ニールの言葉が私の耳に入る


私はあのお店で買ったのは手袋だった


5年以上前「狙撃手は手が命なんだ」というニールの言葉を思い出す
だからあの時彼はいつも手袋をしていた

そしてそれは戦争が根絶された今も変わらない


私はあの傷1つない大きな手が大好きだった


だから…


「ロックオンいつも手袋してるから…」


そう言って見上げると
ニールはあの時のような暖かい笑顔を浮かべて


「ありがとう」っと言った



次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ