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□人形と猫
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 女の自分よりも余程綺麗な顔をしている。と。
 刹那は珍しくもソファーで転寝しているティエリアの顔を見てそう思った。



 刹那はティエリアの傍へと行くと、覗き込む様にティエリアの顔を見る。
 きめ細かい白磁の様な肌。
 長く量の多い睫。
 整った顔。
 寝ている姿はまるで人形の様で。
 刹那が息をしているのかと顔を近付ければ

「何をそんなに見ているんだ」

 とティエリアがぱちりと目を開け鋭い視線を刹那へと向けた。

「起きてっ……」

 ティエリアの突然の覚醒に刹那が顔を離そうとすれば。
 ティエリアは刹那の長い黒髪を一房掴むとそれに口付けた。

「っ!」
「今起きたんだ」

 君の匂いで。と刹那を見上げて言うティエリアの顔は何処か楽しそうで。
 そしてティエリアは刹那の躰を自分の腕の中へと引くと

「まだ眠いから付き合え」

 と逃げない様にと刹那を抱き締めたまま再び目を閉じた。


×××××


 腕の中に抱く刹那の寝息が聞こえ、ティエリアは閉じていた目を静かに開けた。
 規則的に上下する躰を見ながらティエリアは刹那の長い黒髪を手で梳き、丸まって眠る様がまるで猫の様だと目を細めた。



 ティエリアは本当は最初から目が覚めていて。
 誰かが傍へと近付いて来る気配を感じ、その姿を視認すれば刹那だった為再びそのまま目を閉じ眠りに落ちようとした。
 そうすれば。
 顔を近付けて来たのか、ふわりと香るシャンプーの甘い香りに溜まらず目を開けた。
 そして驚いて離れて行こうとする刹那の髪を掴むと誘われるようにその髪へと口付け。
 拘束するように抱き締めたのだ。



 ティエリアは再び刹那へと目を向ける。
 自分の前で無防備に眠る刹那ははたして自分を信頼しているのか、それとも異性として認識していないのか。と。
 そうティエリアは思い、そして自分は何時の間にこんな感情を持つようになったのかと驚いて。
 けれど決して不快ではないその感情に。
 ティエリアは刹那へと顔を近付けると、眠る刹那の頭へと口付けを落としたのだった。


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