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□質より量より心をこめて
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「誕生日、おめでとう」

 僅かながらに微笑んで、二人きりになるなりそう言った刹那にティエリアは目を丸くした。
 ティエリア本人が気にも掛けていなかった自身の誕生日を刹那が憶えていた、という事にティエリアは驚きと共に嬉しさを感じて柔らかい表情を浮かべる。

「憶えていたのか」
「あぁ、ずっと憶えていた」
「そうか」
「ティエリアの生まれた、大切な日だから」

 そして刹那はその言葉と共にティエリアへとぎゅっ、と抱き付いた。

「刹──」
「おめでとう、ティエリア」
「……あぁ」
「……けれどティエリア。プレゼントは余裕がなくて、用意が出来なかった」

 今のソレスタル・ビーイングが置かれている状況。
 それはあまり良くはなくて。
 刹那が申し訳なさそうにティエリアを見上げてそう言えば。

「分かっている。だがプレゼントなど不要だ。君が僕の誕生日を憶えていてくれて、こうして祝ってくれている……それだけで僕には充分だ」

 ティエリアはそう答えると、柔らかくふわり、と微笑んで刹那を見た。
 そんなティエリアに刹那は何かを思い付いたようにティエリア。と名を呼ぶ。

「何だ……?」
「プレゼントは用意出来ていない。でも……」

 刹那はそこまで言うと、一度口を噤んで。
 ゆっくりと自分の唇をティエリアのそれへと近付けて行く。
 そして

「本当に、誕生日おめでとう。生まれて来てくれて、俺を好きになってくれて──」

 ありがとう。と言い終わるより先に、互いの唇を触れ合わせたのだった。



title:Aコース


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