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□not dislike≠like
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 嫌いか如何かと訊かれれば。
 嫌いじゃないと即答する。
 けれど──
 好きか如何かと訊かれたら。
 好きとも好きじゃないとも答えられない、そんな曖昧で不確かなもの──それは俺のティエリアに対するこの感情。


×××××


 ソファーに身を預け読書に耽るティエリアへと横目で盗み見る様に視線を向けている俺は、数日前ティエリアからある告白を受けた。
 それはティエリアが俺を『嫌いではない』という事。
 そして──
 ティエリアが俺を『自分のものにしたい』という事。



 ぱたん。と。
 突然ティエリアが読んでいた分厚い本を閉じると俺へと視線を向け、刹那。と俺の名を呼んだ。

「ずっと俺を見ているが、何か言いたい事でもあるのか」

 ティエリアは本をソファーの上に置くと、視線で俺を捕らえたままで近寄って来る。
 感情の読めないその瞳が怖くて俺はティエリアから目を反らせないままで後退すれば、背中が壁へと当たってそれ以上逃げられなくなり。
 それを好機と見たのかティエリアは一気に俺との距離を詰めて来た。
 顔の横へと両手をつかれ、逃げられない様にされた状態で見下ろされる。
 その有無を言わせない瞳に俺は背中に汗が流れた気がしてティエリアから目を反らし、この場から直ぐに逃げ出したい気分に襲われた。

「刹那」
「……何だ」
「まだ聞いてないぞ」
「何を……」
「答えを、だ」

 ティエリアの言葉に俺は反らしていた視線をティエリアに向け見上げれば。

「俺はお前を嫌いではないと言った」

 自分のものにしたいとも。とティエリアは小さく呟いた。
 そう言うティエリアの瞳が僅かに揺れた気がして

「それは……」

 俺は言葉に詰まった。
 確かに俺は答えなかったけれど。
 けれど──

「訊かれなかったから……」

 答えが欲しい等と言われてない。とそう言えば、ティエリアは柳眉を寄せる。

「お前は訊かれなければ答えないのか?」

 その言葉に俺の中で何かが切れた気がした。

「俺はティエリアの事は嫌いじゃない。けれど──」
「けれど何だ」
「ティエリアのものになる気はない」

 はっきりとそう告げた。
 その俺の言葉にティエリアは目を見開き、何故だ。と語気を強める。

「嫌いじゃないからって好きだとも限らない。そんな曖昧なものでは俺は応えられない」

 そう、応えられない。
 ティエリアは俺を嫌いじゃないとは言っても好きだとは言っていない。
 俺の事を好きか如何かも分からない相手のものになどなれはしない。
 そしてそれは俺にも言える事。
 ティエリアの事は嫌いじゃないけれど、好きか如何かまでは分からないのだ。
 そんな状態でティエリアのものになったところで上手く行きよう筈がないだろう。
 そう告げれば、ティエリアは一度目を閉じ、それからゆっくりと開き再び視界に俺を捕らえた。
 そして──

「好きだ」

 ティエリアの口から静かに零された言葉。

「お前が好きだ。好きだ、好きだ、好きだ。何度言えば良い? 何度言えば伝わる」

 何度言えばお前は俺のものになるんだ? と何時もより饒舌に語るティエリアに俺は絶句した。
 ティエリアがこんな風に言うとは思わなかったから。
 刹那。と。
 紅玉の瞳が俺を見て

「それとも愛してると言った方が良いか? それ程までにお前が欲しいと」

 常のティエリアからは考えられない言葉。
 そんなティエリアに俺は。
 選択肢のない選択を迫られた気分になったのだった。


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