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□コイバナ
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 この胸に咲く想いに名前を付けるなら。


×××××


「刹那〜」

 偶々、だ。
 偶々ロックオン・ストラトスが刹那・F・セイエイを呼ぶ声が聞こえたから。
 偶々その声のした方に視線を向けてしまったから。
 偶々ロックオン・ストラトスに抵抗もせず背後から抱き締められている刹那・F・セイエイが視界に入ったから。

 あぁ、何故だか酷くイライラする。
 何故だか酷く腹が立つ。

 刹那・F・セイエイを抱き締めているロックオン・ストラトスにも。
 ロックオン・ストラトスに抱き締められている刹那・F・セイエイにも。
 そしてそれより何より──こんな事で簡単に心乱される自分自身に一番腹が立つ。
 俺は苛立ちを抑える様にその場から立ち去った。


×××××


 食堂で食事をしているとカタン。と小さな音を立てて椅子が動かされた気配がした。
 横を向けば、一つ席を開けて座る刹那・F・セイエイの姿。
 黙々と食事を採り始める姿を意味も分からずただ眺める。
 パスタをフォークで巻き取り口へと運び。
 そしてそれを咀嚼して嚥下する。
 その動作の繰り返し。

「……何か用か?」

 不意に刹那・F・セイエイが此方を向き、口を開いた。
 俺は言葉を発したその唇に目を奪われる。
 赤くふっくらと柔らかそうなその唇に俺は酷く……酷く心奪われ。

「刹那・F・セイエイ……」
「──?」

 俺はガタリ。と音を立てて椅子を立ち、刹那・F・セイエイの傍へと一歩進めた。
 そして片手をテーブルに突き、もう片方の手で刹那・F・セイエイの顎を固定する。

「ティエリ……ア?」

 訝しげに俺を見上げるその瞳は僅かに不安で揺れていた。

「刹那・F・セイエイ」

 俺は静かに再び名を呼ぶと

「──っ!」

 俺の心を奪った唇へと口付けた。
 その唇の感触に俺は胸の中の靄が少し、否、大分晴れた気がした。


×××××


 呆然とする刹那・F・セイエイを放置して部屋へと向かう。
 するりと唇を指でなぞれば、思い出す感触に自然と口角が上がった。
 あぁ、この胸に咲く想いに名前を付けるなら。
 それはきっと──

 恋の花。



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