気ままに戯文

基本連載主。名前はデフォ固定
◆ナナリ&スザ (R2) 


「ねえ、スザクさん。クラウスさんが死んだって、嘘、ですよね」


ナナリーにそう言われた僕は、うん、ともいいや、とも言うことが出来なかった。

どちらかに答えを決めなければいけないのに、僕の頭は考える事を拒む。


「ええと…」

「…ごめんなさい。困らせるつもりは無かったんですが…」

「ああ、いや、そんな…」


顔を曇らせるナナリーに、僕はやはり何も声を掛ける事が出来ない。情け無い。

クラウスだったら、きっとナナリーに優しい言葉や、力強い励ましを掛ける事が出来たんだろうな。

そんな事を考えていると、ナナリーが顔を上げて、僕に手を出すようにいった。

僕の手をそっと小さな手で挟むようにもって、ナナリーは真面目な顔でこう言った。


「私、信じています。クラウスさんは、絶対帰ってきてくれます」


僕は掌に汗が滲むのを感じた。

ああ、なんて甘美な響きだろうか。クラウスが帰ってくるのなら。

でもごめん、僕はそれを信じないって決めたんだ。


「…そう、僕は――」

「信じなくって、いいんです」

「え?」


その言葉に僕は素っ頓狂な声を上げた。


「スザクさんは、今、すごく苦しくて…解るんです、私。だから、スザクさんの分まで、私が信じていますから」

「ナナリー…」

「こわい、ですよね。帰ってこなかったら、と思うと」

「うん」

「私はスザクさんみたいに強くないし、ユフィ姉さまみたいに果敢な行動は出来ません。でも…だから、帰りを待ち続けます。私に出来るのは、今の所それくらいですから…」


ナナリーはそれから俯いてしまった。

――待つ、と言うのは、ルルーシュの事も言っているのだろう。

憎いルルーシュと、愛しいクラウス。だけど本当は、二人とも愛しい人。



ああ、どうか、

全ての不幸は夢だったと言って。

そうしたら目の前の愛しい少女も、きっと笑ってくれるのに。


全てを奪ったルルーシュから、全てを奪った僕。

それが世界の為であったし、ルルーシュの為だった。

何も知らず、ルルーシュとして生きていられたら。それは幸せではないか。

だけど、結局、僕は彼を自分と同じ境遇にしたかっただけなのかな。



僕は今、ナイトオブラウンズの一員として世界で戦闘を行っている。

止まらない戦争。仕掛けるのはブリタニア。ナナリーが悲しんでいる事も知っている。だけど。



僕は本当の正義を、まだ捜している。
 

2008/08/21(Thu) 20:39

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