【や ら な い か】

□や ら な い か
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名前/ヒラキ



ボトムのポケットに指を引っ掛け、ゆったりとした歩調で公園内を徘徊している。そこかしこで繰り広げられているお仲間同士のやり取りに不躾な視線を送りながら、若いねぇ等と緩く笑み浮かべ、暫し散歩を楽しんでいる様子。その内観察も飽きたのか、足下の小石を蹴る事に夢中になり、大人気なくムキに追いかけているが、当たり所の悪かった小石は歩道を外れ草むらに転がってしまう。

「あーらら……俺から逃げようとするなんて、なんてシャイな小石ちゃん…!無くしてから俺の魅力に気付いたって知らないんだから!」

等と、と一人ツンデレごっこをする寂しい男。地面を軽く蹴り上げる真似なぞすれば、ふと目に入る看板。『このさき沼、河童出没注意』そう書かれている文字に一度パチリと瞬きするも、興味を魅かれたかすぐにニコニコと子ども染みた笑顔を浮かべ、躊躇する事なく看板の向こうにある雑木林へと靴先を向け、奥へと足を踏み入れて行く。

「ほほう、ここが伝説の河童が出ると言う沼かね」

林を抜けてすぐ数歩踏み込めば、視界の先にどんよりとした沼地が広がっている。街中ではなかなか見る事の出来ない光景に思わず感嘆の息を漏らすと、目尻を下げて乾いた草むらにどっかりと腰を降ろす。

暫しぼんやりと暗い水面を眺めているが、元来じっとしていられない性分。手元の背の高い草を根っこごと引き抜くと、軽く振りかぶって水面へと投げ入れる。

「秘技、田植え落とし…!」

珍妙な技名を叫びながら落ちて行く草を眺めやれば、根っこから上手い具合に落下し、ズブズブと沈んで行く。その様子を満足そうに見やっているが、それもすぐに飽きたのか、あぐらをかいた姿勢に片肘を付き、眉間に皺を刻んで何やら難しい表情で沼を凝視する。



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次回予告
「オッス!おらヒラキ!みんな、今週も見てくれたか?この沼、河童が出るらしいんだってよ!おらワクワクしてきたぞ!次回、出た!河童の正体!みんな、見てくれよな!」

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