学園
□此が日常
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甘い香りが近づいてくる
ヒクと匂いを嗅ぎつけると元就は顔を上げ匂いの方向へと顔を向けた
そこに居たのは予想通りの相手だった
「元就殿、今日はチョコレートにござる!」
口元にチョコを付け満面の笑みを浮かべ、手には一口で口内に収まるほどの大きさのチョコが沢山
この甘い香りは幸村の食べたチョコの香りだったのかと小さな息を吐きチョコの山を見つめる
ホワイトチョコも幾つか混ざっていて嬉しさに口元が緩むのが自分でも分かる
「ふむ、早々に食さねば溶けてしまうな。そこに座るが良い真田」
「はい!失礼するでござる♪」
隣の元親の席(担任に呼ばれている為に今は居ない)に座らせると机を合わせチョコを机の上にばらまく
ひとつひとつの包みが太陽の光を反射させとても綺麗だ
「元就殿のご希望通りホワイトチョコも用意したでごさる」
元就と幸村はお互いの好きな甘味を知っているほど毎日共に甘いお菓子を食べている
最初に菓子を食べようと提案したのはどちらだったなんて思い出せないほど昔からこの至福の時を共にしてきた
「すまないな。…真田、此処に来る前にチョコを食べたな?」
「なんと!?良く分かったでござるな!」
「ふん、我の観察力を舐めるでないぞ」
「元就殿には驚かされてばかりだ」
驚きの表情はすぐにいつもの人懐っこい笑顔に変わり、それが元就を和ませる
(あの馬鹿とは大違いぞ…)
元親の笑顔で元就の気持ちが和んだ試しがない
嘲笑うように頭の中の相手に悪態をつけば既にチョコを頬張っている相手を見て元就もチョコを一つ手に取る
包みから取り出し一口で食べるとチョコの甘味と香りが口内に広がり自然と表情が笑顔に繕えられる
「…元就殿」
いつの間にこちらを見ていたのか笑みを浮かべる幸村と目が合い首を傾げる
「何ぞ?」
「甘味を食べている元就殿の笑顔も綺麗だが…元親殿と居る時の笑顔の方が綺麗でござる!」
急な発言にキョトンとして固まってしまったが、内容を理解すると頬を染め手に持っていたチョコをポトリと机に落とす
相手が相手なだけに殴ることも出来ず真っ赤な顔を隠す為に俯く
その様子を幸村は邪気のない笑みで眺めている
「元親殿が好きなのでござるな」
「…なっ何を突然」
「お二方が羨ましいでござる」
笑顔の崩れない様子に諦めたようにどっと溜め息をつき未だに赤の取れない顔を上げ相手を見る
その顔はチョコを口にした時とはまた違う困ったような、それでいて柔らかな笑顔だ
「嗚呼、貴様には敵わないな…」
クスと二人で笑い合うとトンと後から誰かが元就の背中を叩いた
ハッと二人で振り返るととても嬉しそうな笑みを浮かべた元親が目に入った
しまった、と表情を歪めたと同時に抱きしめられてしまい逃げる事は出来なくなった
「元就〜もう大好き!愛してる!」
元就の気持ちを思わぬところで再確認した元親は嬉しそうに好きだ好きだと連呼する
それを暴れながら五月蝿いと叫ぶ元就もまたどこか嬉しそうに見えた(幸村目線)
END