ガーランド×リュウ
□ガーランド×リュウ1
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暗く深い鉱山の奥底、モンスター達が徘徊するようなその場所で1人の異常な程の大柄な男が歩いていた。
一対の、まるで竜を思わせるような翼と同じように竜種を思わせる頭部。
その腕は恐ろしく太く、子供どころか大人の男性の胴体並みだ。
そしてその足も恐ろしいほどの筋肉の塊であり、これもまたどこか竜種を思わせた。
その胴体は他の部位と同じく巨大で筋肉の塊としか言えず、そのために身に着けた道着や法衣を思わせる衣は前をはだけてしまっている。
太過ぎるために下手な木の幹より太いのではないかと思わせるその首に、その身に負けない巨大な数珠をかけている。
その顔には恐怖も何も浮かんではいないように見える。
彼こそ約400年前に女神ミリアが地上に使わした守護天使、ウルカンの民の変じたもの、ガーディアンだ。
先程からあちこちから湧いて来るモンスターを、或る時はその手に持つ長大な槍で切り裂き、或る時は炎の魔法で焼き尽くしていく。
彼は依頼を受けていた。
そう、ダウナ鉱山に出てくるドラゴンを殺して欲しいと。
彼はその依頼を果たすためにここに来ていた。
彼の目の前にはドラゴンの幼生、ドラゴンパピーが歩いている。
大抵の者ならば、その見た目で侮れば恐ろしい威力のブレスで直ぐにでも死を迎えるだろう。
だが、ガーディアンはまるでなんの警戒もしていないように無造作に近づき素早く振るった槍の一撃で気絶させてしまった。
倒れたパピーは人の姿に変わっていく。
その肌の白さと、それとは裏腹に鍛え上げられ筋肉の付いた青い髪の少年。
ガーディアンは目の前の裸の少年に向い呼びかけた。
「リュウ、リュウ。」
ゆっくりと覚醒し、起き上がるリュウ。
それと共に記憶が甦り、目の前の相手が誰かを理解した。
仲間として共に旅した末に天使の塔で自分を殺そうとしたガーディアン、ガーランドだ。
だがその身からは殺意は感じられず、その表情は穏やかと言えた。
ガーランドが袋を置く。中身は服だった。
「これを着ろ。そのままでは不味いからな。」
その言葉に従うリュウ。
彼の顔には恐怖も憎しみも感じられない。
それとはある意味対照的に、ガーランドの表情は曇っていた。
着替え終わったリュウはガーランドに体を向け、話しをしようとした。
だが、先程のダメージが残っていたのかふらつき転びそうになった。
しっかりと右手で抱くように支え、もう片方の手でリュウの左腕を掴んで固定した。
リュウの顔を覗きこむガーランドだったが、その顔色は普通でありただ疲れやダメージによるものである事を理解し安堵する。
「大丈夫そうだな。だが、ここはモンスターも出るからな‥‥。」
思案顔のガーランド、目の前の少年、いや青年の体調を考えると若干の不安があるようだ。
それに対しどこかリュウの顔は申し訳無さそうだ。
ガーランドの考えを理解しているのだろう。
考えがまとまったのか、リュウに顔を向けガーランドが話始めた。
「仕方ない。丁度良く工夫達のために休憩所があったはずだ。
今日はあそこで休み、夜が明けたら出発しよう。」
「ごめん。ガーランド。」
リュウの謝罪の言葉、それに対し一言気にするなと告げガーランドは一歩踏み出した。
「必要が無いときまで無理をする事は無い。」
一言で済まそうとしたガーランドが背を向けながらも言葉を付け加えたのは、リュウの表情を見たためだった。
「‥‥うん!ありがとう。」
ガーランドの気持ちを読み取り、返したリュウの言葉とその声音にガーランドは頬を緩めたのだった。