稲妻11

□マーブルミルクに溶かされる
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よく女は恋をすると綺麗になるという。好きな人を振り向かせるために可愛い服だの髪だの化粧だのしていっぱい努力するんだとかなんとか。
俺は女ではないからそういうのはよく分からないが、俺的にはあまりファンデーションやら口紅やら塗りたくられた顔は好きじゃない。下手に濃い化粧をされるより着飾らずにそのままの自分をさらけ出してくれた方がいい。

『それはあんたの好みでしょー』
「風介も化粧が嫌いだって言ったら?」
『メイク捨てる』
「んだよそれ」
『好きな人には可愛いって言われたいもんなの。そのためなら女の子は皆必死になるのー。』
「ふーん。で、なにそれ。」
『コンシーラー。』
「ふーん…お前あんなに化粧嫌いとか言ってたのに。」
『うん嫌いだよ。金はかかるわ時間はかかるわ。』
「じゃあすんな。」
『うるさいなー』


昔は化粧なんて絶対しないとか何とか言ってたなまえが今ではバッグの中のポーチにはメイクの道具がびっしり入っている。
元々昔から化粧なんていらないくらい綺麗だったし、化粧が嫌いならしなきゃいいのに。一つの恋にここまで変わってしまうものなのか。女って本当に恐ろしいと思う。
それもこれも、全てはなまえが恋するあいつのため。


『…最近さ。』

突然睨めっこしていた鏡から目を離してこちらをみたなまえに目線を合わせる。

「…なんだよ。」
『最近さ、風介君、カッコよくなったんだ。』

いや元々カッコよかったけどね、と付け足して顔を少し曇らせた。…なんだろう。

「…別に普通じゃね?」
『ううん。カッコよくなったの。』
「…へぇ。」
『さっき可愛いって言われるためなら女の子は必死になるっていったじゃん?きっとね、女の子だけじゃないの。男の子だって一緒なの、きっと。』
「…あぁそうだな。」
『風介君もきっと好きな子できたんじゃないかな。』


いつもなら風介を振り向かせるんだとか意気込んでいるなまえが珍しく弱々しく膝を抱いて俯いていた。
いつものなまえならもっと頑張らなきゃって言うのに。今更諦めるとは言うことはないだろうが、なんで今日に限ってそんなこと。
いつもと違うなまえに胸でチクリと違和感が心臓を刺していた。嫌な感じだ。
感じた違和感を隠すようになまえの腕を掴んで俺の自転車の後ろに乗せてペダルに足をかけた。





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