稲妻11

□星の埋葬式
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ねぇ、なまえ。知っていますか。
俺は今までこれほどまでに、こんな感情を抱いたことなんてなかったのです。
離れていればとてつもなく不安で、隣にいれば異常なくらい心臓が胸を打つように鳴ります。目の前で、その瞳に僕が映っているのを見ると話そうと思ったことも忘れてしまってどうしたらいいか分からなくなります。
そんな俺でも好きなのだと、俺に笑顔を向けてくれる君が大好きなんです。
知っていますか。
君は嘘つきなんです。
君は俺なんか好きじゃない。
俺も嘘つきなんです。
俺は"ヒロト君"じゃない。

君の真実は君の知らないうちにそれは嘘に変わり、偽りの愛情を俺は真実として受け入れるのです。
どんなに偽りになろうとも俺はそれでいいのだからそれでいいのです。そう呟く俺すらも君は知らないのでしょう。それでいいと思います。

ただ、その指で、俺の赤い髪に触れてください。その手で俺の手を繋いでください。その唇で好きと言ってください。
無垢な瞳で、無知のまま、ヒロト君と呼んでください。
俺はそう願います。君が君の偽りの景色から戻ってきてしまうまでは、俺の彼女であって欲しい。
君が思い出すまで、君の愛した"ヒロト君"でいさせてください。


『ヒロト君、ヒロト君!流れ星!』
「願い事はしなくて良かったの?」
『ヒロト君を呼んでる間に心の中でした!』
「器用だね。」
『でしょう?ヒロト君はお願い事しないの?』
「流れ星はもう落ちてしまったから無理だよ。」
『今からでも叶うかもよ?』
「叶うならとっくにやってるさ。」


俺は知っています。
流れ星が流れている間に三回願い事を言えたら願いが叶うなんて、嘘だ。
きっと君は心の中こう言った、ヒロト君とずっと居られますように。
死んだ者は生き返らない、それは揺らぐことのないこの世の理、それは誰であろうと壊せはしない。


『ヒロト君の願い事ってなぁに?』
「内緒。」


俺を愛してください。


『えー』


どんなに俺が君を愛そうとも君は一生俺を愛することはない。

だって俺は、基山ヒロト。


「そういうなまえの願い事は?」
『ヒロト君とずっと居られますように!』
「じゃ、俺もそういうことにしといてよ。」
『うん?』
「なまえとずっと居られますように。」






ひっそりと終わってく初恋の孤独死

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