お題

□初めての秘密
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「おい、白華」

「………」

「白華!」

「っ、あ……な、何?」


少し大きな声で呼ばれて、はっとする。
どうやらぼんやりしていたようだ。

慌てて顔を見れば、眉を顰めている碧夜がいた。


「報告してきた。今日偵察した里はやはりあっちの結論で保護下に置くか決めるらしい。まあ、ジジイは手助けをする気らしいがな」

「そっか」


先程碧夜と偵察に行った水の里は、数日前から奇襲が相次いでいるところだ。
しかし、いくら調べてもどこの里か分からず被害が大きくなるばかり。
そこで水影は穏和な性格で知られている火影に護ってくれないかと手紙を出してきたのである。

手紙を読んだ火影は了承の意を示した。
本来ならこれで木ノ葉の里は水の里を保護下に置くことになる。
だが自分達で何とかすべきだと言う上役が撤回するように言ってきた。
最初は二人だけだったのだが倍に増えたらしい。
おそらく、お金で買収したか脅しでもしたのだろう。
数が増えたら無理に進めるわけにもいかないので説得をするとのこと。
後者ならまだ少しは可能性はあるだろうが、前者なら難しいだろう。


「…お前、大丈夫か?」

「え、何が?」

「最近ぼーっとすることが多い」


鋭い指摘に言葉が詰まる。
確かにあの日、碧夜が不当な輩から助けてくれた日から集中力が欠けることが時々ある。
だがそれは任務の時ではない。

それに彼の前ではなかったはずだ。


「様子がいつもと違うの俺が気づかないわけないだろ。何年一緒にいると思ってるんだ」

「…心読まないでよ」

「雰囲気に出てんだよ」


読心術を使ったのかと思ったがそうではないらしい。
面をつけているのに分かるなんて幼馴染みとは面倒だ。

そう思いつつ変化こそしているものの面をしていない碧夜を見る。
彼の部屋にいるからと言っても火影邸の中にあるため気分的に外す気にはなれない。
暗部総隊長の部屋に来る者は滅多にいないが。


「無理はするなよ。何かあったら言え」

「…うん。じゃあ、次の任務があるから行くね」

「ああ」


心配そうにを顰める碧夜に頷く。
昔から彼は心配性だ。
買い物に行くと言えばついてきて、少しでも怪我をすれば強制的に手当てをする。
大人になりつつある今ではなくなってきたが、それでも小言は絶えない。

そんな彼に嬉しくもあり、彼が気にしてくれるのは女の子では自分だけだと優越感に浸った時もあった。
だが日々強くなっていく淡いこの気持ちに気づいてからは、碧夜――ナルトにとっては妹のようなものでしかないのかもしれないと複雑に思う。
そんな色々な感情を押し殺して心配性な幼馴染みを安心させるように微笑んだ。
昔から変わらない、でも大人びてきた白華の笑顔に碧夜頬を緩ませる。

つられて笑みが深まる。
碧夜の相槌に手を小さく振って返し、白華は彼の部屋を後にして任務へと向かった。



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