お題

□君が異性に変わってゆく
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「まあ、こんなところでずっと話すのも何だし、甘味処にでも行こうぜお嬢ちゃん」

「だから……!ちょっと、手を離して下さい!」


めんどくさくなって少し現実逃避していると手を掴まれて引っ張られる。
それにはっとして慌てて足に力を入れるが、いくら暗部と言えど男女の差は埋められず、振り払おうにも力が強くて敵わない。

結局はただお茶がしたいだけなんだから暇な奴探しなさいよ!と思いつつ、今まで我慢していたが堪忍袋の緒が切れて実力行使でいこうと頭が悪いこの男を蹴り上げるために足に力を入れた。


「ぐあっ」


目の前にいる男が悲鳴を上げ、倒れはしなかったものの体が少し傾く。
しかし、それは千夜がしたものではない。

彼女が行動に移す直前に男と彼女の間に割り込んだ人物によるものだ。


「悪いがお前達に時間を潰すほどこいつも暇じゃないんでな」

「な、誰だよてめぇっ!」

「お前等に名乗るまでもねぇが、簡単に言うと幼馴染みだな。後、俺もそう暇じゃねぇんだ」


だからこれ以上怪我したくなかったらさっさと消えろ。

殺気の込められた瞳と共に言われ、男達は悲鳴を上げて去っていった。
その方向を彼の後ろからまだ追いつかない頭でぼんやりと見つめ、そして自分を助けてくれた彼を見上げる。


「……碧夜、どうしてここに?」

「報告の帰りに見かけたんだよ。…何であんな奴殴り倒さなかった」

「いや…だって一般人だし、まだ手は出されてなかったから」


我慢の限界で碧夜が来る直前に蹴り飛ばそうとしていたが。
しかしそれまでそうしなかった理由を言うと、呆れたように深いため息をつかれた。

彼女のそういうところは悪くないのだが、今回ばかりはその甘さに賛同しかねる。
額にあてていた手を離し、目を合わせると碧夜は口を開く。
一般人の前に出たため、暗部だと知られないように外している面で見える表情は母親が子供に言い聞かせるものと似ている。



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