お題

□近すぎて近づけない
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「ちょっとナルトー!走ったらこけるわよ!」

「大丈夫だってばよ!俺はそんなにドジじゃ……うわっ!」


言った傍から盛大にこけたナルトを見て、サクラはため息をつく。
昨日は久しぶりに大雨が降って、水溜まりが至るところにある。
ここ最近は猛暑だったから嬉しい。

まあ、欲を言えば朝に降ってほしかったが。
そう思いつつ水溜まりへ盛大にこけたナルトを拭くためにポケットからハンカチを取り出す。


「全く、2年経ってもドジなところは変わらないなんて。あんたも大変ね、千夜」

「流石に慣れたかな」


労るような笑みでこちらを見る彼女に、千夜も小さく笑う。

そして、濡れたことに落ち込んでいる彼の元へ行こうと足を踏み出した。


「早く付き合えばいいのに」

「…もう、前から言ってるけどそんなんじゃないってば」

「口調まで移ってるのに?」

「これは不可抗力!」


にやり、と笑って言うサクラ。
そんな彼女に頬を膨らませて怒ったように小さく叫ぶようにして返す。

そして悪戯が成功した子供の笑みを浮かべて、ナルトの元へと向かった。


「ナルト、大丈夫?」

「大丈夫だけど濡れたってばよ…」


唇を尖らせて少し不機嫌そうにごちる。
自業自得だ。

でもやはり心配にはなるわけで、ハンカチで拭う。
顔から水溜まりに入っただけにずぶ濡れになった頭から滴がぽたぽたと落ちていく。


「――もう、あまり無理しないでよ」

「悪い」


眉を下げてぽつりと呟く。
表ナルトの馬鹿なおふざけ。
それ故の行動と現状だとしても心配させてしまっているのは彼女の表情から明らか。

いつからか心配症になった幼馴染みを安心させるために、ナルトは苦笑いをして少し離れたところにいるサクラに聞こえないように小さな声で謝った。



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