お題

□君が異性に変わってゆく
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「任務に行く時だけじゃなくてその姿で買い物行く時も言え。っていうかその姿じゃないと買えない時以外は変化するな」

「………」


無茶苦茶なことを言う彼に千夜は呆然とする。
冗談?と思うが、そんなことを冗談で言う性格ではないことはよく分かっている。

しかし、実際そんなことは不可能だ。
任務は一日だけで終わるものばかりではないし、一番短くても二日かかる任務はよくある。
長期任務だってざらだ。
千夜が買い物に行く時に碧夜がいつもいるとは限らない。

まあ、そう言ったところで影分身に行かせるだとかシカマルに付き合わせるだとか言うのだろう。
因みにそう言ったわけでもないのに一緒に行くこと前提で思うのは今までの経験によるものだ。
伊達に幼馴染みはしていない。


「分かった」

「…ん。じゃあ帰るぞ」


ああ言えばこう言うのが分かっているので、とりあえず頷く。
無茶を言えばその時にまた考えればいい。

了解の意を示した千夜に碧夜は満足そうに頷くと、彼女が持っている手から買い物袋を取り、それによって空いた手を握って歩きだした。
紳士だなー、と掴まれた手を見ながらぼんやりと思う。

乱暴そうに見えて、何気に優しい幼馴染み。
変化しているため自分より高い碧夜の――ナルトの背中を見上げる。
広い背中に、さっきのことを思い出して胸が高鳴った。

引っ張って無理矢理連れて行こうとしたあの馬鹿な男を殴り倒して助けてくれた時に見た背中。
あの時、確かにこの胸は今のように普段より早く鼓動を打ったのだ。
変化しても千夜にしてみれば変わらない見慣れた彼の後ろ姿が、あの瞬間からとても…その先はまだ表現はできないがいつもと違って見える。


―――どう、しよう……。


忙しなく鼓動が鳴る胸に手を置く。
これが何を意味するか分からないほど子供ではない。
でも、ナルトとの関係を考えればそれは持ってはいけないものだ。
どうしてこんな時に気づいてはいけないことに気づいてしまうんだろう。
いや、時は関係なくずっと気づいてはいけなかったのだ。分かるべきではなかった。

…幼馴染み、なのに。
どこか心地好い胸の高鳴りを感じながら、千夜は手を引かれたまま家に向かう道を歩いていた。



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