さいごのなんちゃらとか

□嗚呼君よ世界よ濡れた想いよ
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「っはあ、くそ・・!」


僕とした事がへまをしでかしてしまったらしい。
細い路地裏を縫うように適当に走り抜ける。そのすぐ後ろにはスーツ姿の男が2、3人どころじゃない、もっとたくさんいる。ざっと足音で考えて10はいる。
さっきまでは20はいたのだからそれを考えるとだいぶ減ったかとか考えているととうとう行き止まりにぶち当たってしまった。
嗚呼、本当に運が悪い。
こんな自分でも死ぬときがくるのかと思うと堪らなく可笑しくなってきて笑えた。から笑えば彼奴等驚いた顔をしている。
嗚呼、愉快、だ。




嗚呼、骸がいない。
可笑しいわ、ここで落ち合うはずだったのにまさか!
はっと地面を見てみると点々と続く血の跡。
わたしはそれを追いかけた。




大分もう数は減らした。
もう2、3人ぐらいしかいない。まあ、当然かとか思うが正直もう無理だとか自分にしては珍しく弱気な事を考える。
嗚呼きっと、この場に彼女がいたら諦めたら駄目だとか言うんだろうなとか考える自分に気付き自分も末期だと一人哂う。




見つけた。
2、3人と対峙している。彼の周りには沢山の死体が。きっと彼が殺したのだろう、一人で。そういう彼も結構大きな傷を負っているみたいで珍しく苦しそうな顔をしていて、敵の動きへの反応が、遅れた。




銃口が此方へと向けられる。かわさなければ。わかってはいるが身体が動かない。諦めよう、そう思った瞬間身体が吹っ飛ばされた。




危ない、そう思ったときには身体が勝手に動いていて、火事場の馬鹿力とかそんなので骸の身体を突き飛ばしていた。結果、銃弾を浴びたのはわたしで。




僕の代わりに本来僕が負うはずだった傷を彼女が負っていた。見る見るうちに彼女の身体は紅く染まっていき彼女の傷の真下には血溜まりが出来ていた。




激痛が身体を襲う。その瞬間、男たちが崩れ落ちていた。どうして?とか思ってると、どうやら骸が男たちを殺したみたいだとすぐわかった。嗚呼良かった。彼は無事みたい。




彼女が死ぬ。僕らしくなく動揺していて、それが何故かなんてわからなかった。ただ、彼女と一緒にいられなくなるのは嫌だと思った。ただ、それしか考えられなかった。




慌てて骸が近づいてくる音がした。骸が慌てるなんて珍しいからちょっと笑いそうになったけどやっぱり笑えなかった。流石にきついみたいだ。わたしも死ぬんだなあとか考える。ちょっとそれは困るな。わたしまだ、骸に伝えてないのよ。




ヒュー、という心許ない音をさせながら息をしている彼女を抱きかかえる。当たり所が悪かったみたいで、彼女が死ぬのだということが更に現実味を帯びて僕に圧し掛かった。




嗚呼、最後に神様、これぐらいは言わせて。じゃないとわたし、死んでも死に切れないわ。


「む、くろ」

「喋らないでください、血が」

「へ、いき」


骸もわたしが死ぬという事がわかっているみたいで、おとなしく聞いてくれるみたいだ。ありがと、骸。


「わた、し、ね」

「・・はい」

「あなたの、こと、す、きだっ、たの」


骸の驚いた顔が目に映し出される。最後に骸を驚かせてやったというなんとも言えないしてやったり感に頬を綻ばせながらわたしは瞼を閉じた。
好きよ、骸。




彼女の瞳がゆっくりと閉じられた。終わった。終わってしまった彼女という命が。それは変えようも無い事実で、それは同時に僕に悲しみをもたらした。僕も、本当は。


「あなたが、好きだったんですよ」


彼女が死んでから気付くなんて。僕はなんて愚かなんだろう。
それでも弱い僕は彼女が死んだ事を世界の所為にした。自分が壊れてしまうから。



嗚呼君よ世界よ濡れた想いよ


君よ世界の所為にした僕を赦してはくれないか






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2009/03/15


リクありがとうございました!
こんなのになってしまってごめんなさい><
本当にありがとうございました!


  

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