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□他人事なのにそんなに嬉しそうにして(ケン翠)
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「ケンちゃんっ!」
目の前が突然ぱあっと明るくなったと思ったら、あの子がオイラに笑いかけてたんだ。
「はあい、翠ちゃん!どうしたの、デートのお誘い?」
オレは両手で自分のほおを挟み、かわいらしく言ってみる。そしたらあの子はやはははとひとしきり笑ったあとで、こう言った。
「うん、そ!一回家帰ったらふたりで街に行こう!」
うっそ、うそ、夢じゃない?
翠とデートだって、で、え、と!
オイラは鼻歌交じりに自転車をこぐ。(・・・・・いつものことだけど)家の前につくと、ちょこっとオシャレした翠がわーいといって手を振った。
「あれっ?『バイクで迎えに行くぜ!』って言ってなかったけ?」
「そのつもりだったけどちょうど今休憩時間なの。だから今日は代理の自転車、アンソニーよ、よろしくね、翠ちゃん」
アンソニーって名前だったの!初めて知ったよ!よろしくね、いまさらだけどっ!
そう言って翠がアンソニーに笑いかけると、その笑顔に答えたかのようにハンドル部分がきらりと光った。
「ところで翠、今日はどうしてまたお街に?」
「ああ、あのね!実は明日文太の誕生日なの、だから一緒にいいもん見つけよーよ!」
「おお!明日だったのか文ちゃんズバースディ。あ、忘れてたわけじゃないのよ、知らなかったのよ」
「もうダメじゃーん、親友の誕生日忘れるなんてっ!」
「だから知らなかったんだってばぁー!」
だってオレ、翠の誕生日は覚えてるもん。
腹を抱えて笑う翠に内緒でそう思う。そしてふっ、とひとりで笑うと、自転車にまたがった。
「じゃ、行きますか?」
「うん!れっつごー!」
翠はオイラの肩で支えて立ち乗り。乗った瞬間自転車が弾んだのにあわせて、オイラは太陽輝く真っ青な空を見上げた。まぶしっ!と目を細めてからきりっとペダルに足をかける。
「おじょーさん、しっかりつかまってな!振り落とされねぇようにな!」