「アレン君〜」

ツインテールの美少女が、駆けて来る。
彼女はリナリー・リー。コムイ室長の重すぎる愛を一身に受ける。ある意味かわいそうな女の子だ。
まあ、借金を背負わされる自分より大分ましだろう。
クロスの自分に対する行動に師弟愛を感じた事はないからだ。

「どうしたんですか?リナリー」
「アレン君、神田知らない?」
「……神田…ですか」
クロスのベッドの上で、いかにも食べられました。と言う裸体の神田とクロスの人の悪い笑みを思い出して。

カァー

と、

体が熱くなる。

無類の女好きなクロスと数年生活を共にしたのだ。見てしまった事や見せられた事もあり慣れているハズなのに。
相手が、あの神田だからか、どうにも居たたまれない感じがして。
「どうしたの?赤くなって?」
「そんな事はないですよ」
「そう?」

それは見つかるハズがない。神田はクロスの部屋で寝ているのだからクロス=神田。誰にも思い浮かばぬ図式だ。
アレンとて思い付かない、新たなクロスの趣味だ。

師匠…男もイケるんですね。

いや、相手が黙っていれば極上ランクの神田だからかもしれない。あのプライドの高いツンツンした神田がクロスの下でどんな姿で乱れるのか?興味がなくはない。自分も先程見た麗人の艶姿にヤられたのかもしれないが。

「あら?ティムキャンピー何を食べているの?」
「わっ?」
ティムの口?から白い紙がはみ出している。最近、必要ないのにアレンを見て物を食べる事を覚えたから、何処かで書類でもくわえて来たのだろう。

アレンはティムの口から、無理やり紙を引っ張り出した。
「まあ!手紙?誰の?」
「………この筆跡は、…師匠」
「クロス元帥?」
「宛名は……室長!」
「兄さん?」
「アレン君はお手紙、兄さんに届けてあげて。緊急かもしれないし」
「リナリーはどうするんですか?」
「兄さんに神田呼んで来るように頼まれたたのよ〜もう少し探してみるわ」
「………」
「アレン君?」
「…いえ。何でも」
「…そう?」

手を振って去って行くリナリーに最後まで神田の居場所を教えられなかったのだが。

「行くよティムキャンピー」
気を取り直して歩き出した。





「……………」

クロスからの手紙を読んでいたコムイの眉間に深い皺が寄る。
手紙を放り出して、バッタリと机に伏せた。
「あっあの?師匠は…何て?」
「神田君を借りる…ってさ」
「昨日から散々ヤりまくりだろうにまだ、足りないかね〜あの年中発情男は」
「……はっ…発情」
ワタワタするアレンを愉快に見つめて。
「二人の関係?知ってるよ〜無類の女好きだからね。リナリーに危害が及ばない様に神田君には期待してるんだよね〜」
恐ろしい事をコムイはサラリと告げる。
「アレン君〜引かないでくれたまえ!神田君は大事な黒の教団のエクソシストだが、リナリーはそれプラス僕の可愛いい妹なんだよ!」
力説するコムイは室長と言う立場を完全に離脱して、だだのシスコンになっていた。
「…はぁ」
「見てくれたまえ」
手紙の2枚目を差し出される。
「………リナリー良い女に育ったじゃねえか…」ただそれだけが書かれていた。
「脅しだよ!脅し!!許可しないとリナリーが食べられちゃう」
「………否定できませんね」
肯定なら出来るが。
「神田君に犠牲になってもらうしかないんだよ」
「………その様ですね……」
二人のため息と、リナリーの神田を探す声だけがむなしく教団内に響いた。



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