人間失格〜81番の記録〜

□後悔
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約束の時間は21時半。
お店の人が、駅前まで迎えに来てくれる。
これは風俗店ではお決まりの儀式。
迎えに来てくれたのは副店長だった。
きっちりとセットされた髪にスーツ姿の世間で言うイケメンの部類に入るのだろうか・・・そんな人だった。
ホストですと言われても、きっと信じていただろう。
風俗の店員さんなんて小汚いエロオヤジや強面ヤクザばかりかと思っていたが、
こういう人も居るんだなぁというのがそのときの素直な感想。
副店長に連れられ、お店へと移動した。
周辺の地理についてや今までの職歴等実の無い会話をしながら歩いていく。
これもお決まりである。
お店に到着した。
入り口に入ると早速ある階段、ダルイ。
階段を上がるとまず見えるのがキッチンとその奥にあるトイレ、
そしてお客さんの使う待合室と女子従業員の更衣室がある。
最初に連れて行かれたのは更衣室。
制服とロッカーと椅子や私物なのか分からないがアイロンやら鞄やらが置いてある狭い空間。
そこで面接用紙を書かされた。
そして待合室へ移動。
ソファーにテーブル、風俗雑誌が何冊が置いてある。
営業はしているようだがお客さんは居なかった。
お客さんの居る所でで面接なんて出来ないし当たり前か・・・
よくある質問をされた後に実際に店内を見ることになった。
ホールはもう一つ上の階。
階段を上がると全体的に薄暗いけれど所々ライトでピカピカしている部屋。
ボックス席がいくつかあってBGMと放送の声がやたら五月蝿い。
その時はそのくらいしか思わなかった。

ここで、働くのか・・・


私は平成元年8月生まれである。
京橋のセクに入店したのが2007年5月。
あと3ヶ月もすれば偽造身分証でなく本物の身分証で働くことができるのだ。
嘘偽りの自分で働くことは、結構ストレスになるものだ。
お店の人達との会話は常に気をつけなければならない。
そんな生活も嫌なので、早く本来の自分で働くことを望んでいた。
あと少し・・・8月の誕生日が来たらここのお店は直ぐにでも辞めて、新しいお店へ行こう。
本当の自分で・・・。
そんなことを考えていた。その時は。
大体水商売やセクキャバなんて業種は自分には合っていないのだ。
店内が五月蝿いからだろうか、外見が派手だと思われがちだからだろうか、
華やかだか煌びやかだかそんな風に思われがちな所だ。
そんな派手な所あまり好まないのだ。

3ヶ月・・・



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