人間失格〜81番の記録〜

□せめて、最善を
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10月、彼が交通事故で暫く仕事を休む事になった。
彼が休んでいる間はとても快適に仕事をしていた。
仕事の成績で悩むことはあったが、彼に仕事姿を見られることが無い。
やはり指名が取れない姿は格好悪い。
そんな姿を見られるのが苦痛だったからだ。
そして、彼の仕事姿も見ないでいいのである。
彼が他の女の子と話をしているのを見ているのが凄く嫌だった。
前にも書いたように、風俗店では女の子が商品だ。
店員さんが商品を大切にするのは当たり前。
他の女の子に親切にしているのも、楽しそうに話をするのも大事なお仕事だ。
わかっている。
わかっているけれど、仕方ないけれど・・・
毎日毎日自分に言い聞かせる。
ただの嫉妬。
私ばかりヤキモチを妬いているのが嫌だった。
だから私はbPを目指しているのだ。
待機室で話をしていたいと思うこともあったが、
頑張って指名を取り常にお客さんを接客することを心がけた。

もし私が仕事を辞めたら、彼の仕事姿を見ないで済む。
仕事を辞めたほうがいいのか、何回も考えた。
でもきっと、辞めてしまったら不安になる。
一緒に仕事をしている今でも、全く不安が無いと言ったら嘘になる。
どうしたらいいか、毎日そんなことばかり考えた。
自分の性格が嫌で嫌で仕方なかった。
彼に仕事を辞めてくれなんて言えない。
彼はボーイさんで私は嬢、どっちの仕事の方が底辺なのか・・・
最低な事をしているのは・・・私。
だから言えない、絶対に。
ヤキモチ、不安・・・悟られてはいけない。
彼の仕事を邪魔してはいけない。

仕事に精を出すと今までよりストレスが溜まる。
それに加えて発狂しそうな程の嫉妬。
その矛先は次第に他の嬢へ向けられていった。
仕事でも許せなかった。
私は日に日に店の女の子との交流を避けるようになった。
それは、成績で上に行くのにも必要なこと・・・

彼が仕事を休みだして数日が経った。
彼の上司、お店のオーナーから彼の携帯にメールが着たらしい。

系列のミナミ店に行くことになるかもしれない

・・・。
そうなったら一緒に仕事をすることが無くなる。
彼の仕事姿を見ることは無い。
でも・・・
仕事姿を見ることが無いだけで、仕事を辞めるわけではない。
これで気が狂いそうな毎日から開放される・・・?

・・・。

10月の19日、移転が決まってしまったらしい。 
私にはどうしようも出来ないし、どうしたらいいかもわからない。
だから、出来るだけ元気でいよう。
一人でも頑張るんだ。頑張れてる所を見せるんだ。
余計な心配は、かけさせない。
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