人間失格〜81番の記録〜

□信じられない
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これは恋と言うのだろうか。
多分、違う。
でも仕事が楽しみで仕方なかった。
話しかけてもらえるのが嬉しくて、早めに出勤したりもした。
仕事も必ずラストまで働いた。その方が話すチャンスがいっぱいあったから。
仕事中も気づけば勝手に目で追っていた。
お店が暇なとき、ボーイさんが女の子の話し相手になってくれることがあった。
それが嬉しくてなるべく待機席にいたかった。
指名なんて考えられない。
指名してもらったらずっとお客さんの相手をしなければいけないから。

周りの女の子は皆応援してくれた。
メールアドレスを聞きだす方法など、色んなアドバイスをしてくれた。
でも私はそんな気はなかった。
たしかに好きだった。
けど付き合うなんて出来ない関係、仕事中相手をしてもらえるだけで満足だった。

風俗店では女の子が商品だ。
店員さんが商品を大切にするのは当然なこと。
相手をしてくれるのも優しくしてくれるのも、すべての商品に向けられたもの。
それを知っていたし、夜の仕事で社内恋愛は御法度だ。
そして何より、私はまだ17歳で本来ならこの店に居てはいけない年齢だ。
この店にいる期間は誕生日が来るまでの間だけ。

7月に差し掛かったころ、ある女の子と少し揉め事が合った。
結局問題は解決したのだが少し気まずくなってしまった。
もともと性に合ってない仕事。
だんだんとストレスも溜まってくる。
いくら楽しみがあったといっても、やはりしんどいものだ。
予定より少し早いがもうそろそろ辞めよう。
とりあえず次の〆日まで・・・それまでは週1でシフトを入れれば問題ない。
元々期間限定ではじめた仕事。
なのに、辞めたくない。
どうしてだろう・・・辞めたくないと思ってしまった。
あぁそうか。
お店を辞めてしまったらもう会えないから。
そんな風に思うならなるべく早く辞めてしまった方がいい。
辛い思いをするのは、嫌だ。



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