人間失格〜81番の記録〜

□後悔
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面接先が決まった。
京橋にある、セクシーキャバクラだった。
求人のメールを送ると、すぐに丁寧な返事が着た。

面接に受かればここで働くんだ。
今度も上手く役をこなせるか・・・

今回も勿論身分証を偽造している。
名前、生年月日すべて偽者。
私は一人称に名前を使う癖があったのだが、その癖はきっちり治した。
今でも昔からの知人や親の前では出てしまうが・・・
まぁ一人称に本当の名前を使ってしまったくらい問題は無いだろう。
前の店の源氏名とかなんとか言って誤魔化せばいいのだから。
面接での質問も大体予想がつく。
適当なことを言っておけばいい。

そんな事を考えながら面接の日を迎えた。
春も終わり梅雨に差し掛かろうとしていた5月27日だった。


密かに色んな夜の仕事をしてきて分かったことがある。
よほどコンセプトをきっちりと設けている店でないかぎり、
風俗の面接に落ちるなんてことはほぼあり得ない。
履歴書の要らない仕事なんて、まぁこんなものか・・・
当時はそんなこと分からなかったので面接と言うだけでドキドキしていた。
なるべく当たり障りの無い服装や髪型、ネイルに至るまで気を使ったいたものだ。
人には話さないが実は殆どの業種を経験してしまった。
一日体験入店で終わった店ばかりだが。
夜にどっぷり浸かっている今、余程のことがない限りドキドキなんて表現を使うことが無い。
そして分かったことがもうひとつ。
面接のときに、履歴書の代わりに身分証が必要になる。
これは18歳以上かどうかを判断するためだ。
きっちりとした店なら、住基カードや免許証といった顔写真つきの身分証が必要になる。
それに追加して本籍入りの住民票や高校中退者なら中退証明書、
電話で親に確認の連絡をした店まであった。
(勿論、風俗店だとは言わないが)
私が使っていた偽造身分証は偽の保険証、これだけだ。
最初に働いた日本橋のホテルヘルスやこの文章の中心になる京橋のセクキャバ、
そしてその他2店舗がこの偽保険証だけで働けたのだ。
適当な店は本当に適当だということだ。



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