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言ってしまえば、禁断の恋をしている俺ら。
男同士で恋愛なんて、世間一般的にオカシイのだろう。


しかも相手は大人。
そして、教師だ。

駄目な事なんだって、遠の昔に理解している。



だけど、一目惚れなんて大層な言葉を使って、俺はあいつに惚れたんだ。

暴露すれば、好きで好きで仕方がない。



なのに最近、あいつは俺と目すら合わそうとしない。
こっちを見る事も無ければ、あからさまに俺を避けている。


「嫌われた…か?」



考えてみても、思い当たる節は皆無。

そもそも自分は、あいつと恋愛をしていたのだろうか。
そう考えてしまう程、俺らの関係は曖昧で。


『僕のものになりなよ』とは言われはしたが、肝心な事は言われてない気がする。

言葉にしなくても伝わる事があれば、言葉にするからこそ相手に伝わる場合だってある。
その事を、あいつにも少しで良いから分かって欲しいものだ。





いつの間にか、空はポタリポタリと涙を零す。
葉の間を擦り抜けて、頬に落ちてきた雫を、手の甲でぐいっと拭った。


校舎から、本日の授業終了のチャイムが響く。

雨脚はどんどん強くなって、じきに此処に居ても、ぐっしょり濡れてしまうだろう。
そうなる前に、さっさと帰ってしまおう。



今日の最後の授業だけをサボったのだって、あいつへの当て付けだ。

目的は達成した。
早く、帰れば良い。







そうは思っていても、足は動かない。

俺は何を期待している?


待っていたって、あいつは来る筈がない。




梅雨の雨は、思ったよりも冷たくて。
濡れたシャツが素肌に引っ付いて、欝陶しかった。




END


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