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あの式から3日後
本格的に始まった、教師という仕事


忙しいけど、同じ事を繰り返すだけ

初めて行くクラスには、形ばかりの自己紹介をして
授業なんて、教科書通りに進めれば文句は言われない



今日行くクラスは、記憶が正しければ彼がいるはず
教室前の廊下に立つと、休み時間だからかざわついていた





突然、目の前の扉が乱暴に開く


見えたのは、透き通る様な銀色
並べば少し低い、エメラルドグリーンの瞳に見上げられる

――獄寺隼人、






(変わった色…)


髪の色といい瞳の色といい、一度見れば頭から離れない

――そんな、色。





声を掛けても反応しないし、名前を呼べば逃げ出す

席に着いて(正確には着かせて)、大人しいと思ったら寝てるし



(ホント、見ていて飽きないよ…)




せっかくの髪が、抜けてしまわない様に気をつけながら頭を起こさせ、そのまま授業続行



いつまでも掴んでいるのもどうかと思ったので、ゆっくりと指の力を弱める

するりと指の間を流れ落ちて行く銀糸
先程おもいっきり引っ張った髪を、労う様に撫でれば心底驚いたらしく、目を見開いた



それでも、涙目で睨んでくる瞳
視線を合わせれば、一気に赤くなる顔


(かわい−…)









――えっ?!

…可愛い?
なんで思ったんだろう
彼は男なのに、どうして――



―――キーンコーン…





思考の途中で無情にも響いたチャイム音

何故、男なのに可愛いなんて思ってしまったのか
理由が解らなくて、苛々する



取り敢えず、頭に載せていた手を退けた



「授業は此処まで
次の時間は移動らしいから早く行きな」



言づてを簡潔に伝えて、人払い
逃げようとする猫を捕まえて、資料室まで運んだ


本当は、気絶させるつもりなんて無かったのだけど、このもやもやした気分の中手加減が出来る筈もない



君と居れば、さっきの答えが見つかる気がする
その事にくつりと笑んで、優しくソファーに降ろした




今は閉じられている、エメラルドグリーンの瞳
赤く色付いた唇
滑る様な手触りの銀色の髪

そのどれもに魅了される
視線を、奪われる――




あぁそうか
もしかしたら僕は、

「好き。なのかな…」




曖昧だった答え
声に出して肯定すれば、しっかりとした形となった



思ってしまえば簡単で、胸につっかえていたものが跡形も無く消え去る
代わりに、初めての感情が心を埋めた


しゃがみ込んで銀の糸に指を絡め、頬にキスを落とす




ねぇ、早く…

「僕のものになってよ」






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