SILVER:

□SILVER:Ver.生
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『SILVER:』番外編になります
設定は同じですが、本編とは分けて考えて下さい

――――――――――――




雨が、降ってる


最近の秋晴れの空には似合わない、雨が


シトシト
欝陶しいそれは、教室の窓ガラスを濡らした

景色が、横に波打つ


雨は、止まない






***



今日は生憎の雨

気分は最悪だ



窓際の俺の席
晴れている時は太陽の光がふり注いで、絶好の昼寝スポット

だけど雨だと、廊下側にいる奴よりも何倍も、どんよりした気分になる。そんな場所



朝からの雨に、イライラもそろそろピークだ
それでも、今日最後のこの授業だけは、絶対に抜けられない


ちらり
教科書から顔を上げ、相変わらず黒板を使わずに口頭で授業を進める教師を見た



――雲雀恭弥

的確なポイントだけを押さえた授業は人気上々
ただその、無表情で愛想の悪い所が玉に傷


「今日は此処まで。各自次の予習は忘れない様に」


声と共にチャイムが響く

こいつの授業が終わった後は大騒ぎだ
何たって、雲雀は女子に人気だから

話す口実を作ろうと、前に集まって勉強を教えて貰おうとする


クラスの殆どの女子に揉みくちゃにされる雲雀
HRまでの数分間、教卓の所は、さながらバーゲンみたいだ


そんな事を考えながら目の前の光景を見ていると、心底嫌そうな顔した雲雀と目が合った


…あっ俺、今助け求められたかも



女子達の輪から、あいつが出て来る
がっかりした表情のクラスメイトは、なおもまだ諦めきれずに雲雀を見ていた



こっちに来るあいつを、どこか人ごとの様にぼんやり見上げる

少しだけど、雲雀が笑った。そんな気がした



「ねぇ、獄寺。今日の放課後、プリント纏めるの手伝ってよ」

「えっ…!?な、んで俺が」

「拒否権ないから。君さっきの授業、全く聞いてなかったでしょ」

「ゔっ…」

「はぁ…。授業出るならちゃんと聞きなよ。」


そんな事言われたって、教科書読んだら大体理解出来るし
別につまんない訳じゃないけど、やっぱり意識は違う所に行く訳で


「雨だから、憂鬱なのは分かるけど。――それとも、僕に見とれてた?」

「っ…!!!んなわけっ!!」



…いや、うん。図星だったりする
その証拠に、急速に上がる体温




……なんだよ
教科書ばっか見てたくせに

気付いてたなんて卑怯だ



「くすっ…。相変わらず分かりやすいね、君」

「うっせぇよ…」



小声での会話
クラスの奴らには聞こえてないだろうけど、恥ずかしさから顔が熱い


「拗ねないでよ。…じゃあ、待ってるから」

「…っ!!!」




雲雀が教室から出て行っても、暫く動けなかった
それより、さっきあった事を、頭の中で整理するのに必死だった


去り際に頬を掠めた唇
至極自然で、それでいてあいつらしい
……早業だ



雲雀の事だから、俺がこんな状態なのは予想済みなんだろう




くっそぅ…
どうすんだ俺
顔赤いままでHR出るのかよ


.
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