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若葉が揺れる大木の下

木漏れ日の中寝転び、空を見上げる
もちろん、授業はサボりだ

「だぁもうっ!!――わかんねぇー…」


叫んだ声は、雲の浮かぶ空に吸い込まれていく
そよそよ吹く風が、頬に当たる芝生を優しく揺らした



憎らしい程晴れた空に溜め息を吐き出し、この悩みも一緒に消えてくれないか。なんて、柄にもなくセンチメンタル


どうあがいたって、あいつのものになる宣言をした事に変わりはないのに


別に、それが嫌という訳ではない
寧ろあんなに格好良くて、一目惚れであれ惚れた相手だ



悔しいが、嬉しいに決まってる

でもそれは、俺が女だったらの話
実際、俺は男だし背だってそこそこある
(まぁ、あいつには負けるけど…)

可愛いげなんて皆無だし、女みたいに柔らかい身体でもねぇ

それに、筋肉だってあるんだ
いくら頑張ったって、女の代わりなんて出来ない





…なのに、あいつは俺を選んだ
否、気に入ったから側に置いておくだけかもしれない


それでも
唯の気まぐれであったとしても

あの時、髪を撫でる手を受け入れたのは自分で
甘い吻付けに夢中になったのも、また事実


思い出すだけでドキドキする昨日の情景を、あいつの中にはどれくらい残っているのだろう




「わかんねぇ…」


あいつの気持ちが
自分の考えている事が






「ホント、わかんねぇよ」


「何が、分からないんです?」

「…えっ!?」



独り言に返って来た言葉
驚いて跳ね起きると、すぐそばに人

…こんなに、近くに居ても気がつかなかったなんて
どんなに真剣に悩んでいたのか



さくり。芝生を鳴らしながら、相手が近付く
白衣を靡かせ微笑む姿は、さながらどこかの紳士かと思ったが、見慣れない顔に訝しむ表情を向けた



「…誰だ、てめぇ」

「おや、すみません。紹介が遅れましたね…」



生徒に対しても、柔らかな物腰に敬語で話すそいつは、新しく来た保健医で六道骸と言うらしい

まぁ、着任式で寝ていた俺にすれば、初めて見た顔である事も頷ける



整った顔立ちに、左右非対称の色を持つ瞳
腰程まで伸ばされた髪は、後ろで緩く結ばれていた

これまた俺より遥かに高い身長に、一度見たら忘れられない容姿


雲雀と同じく、女達が放っておかないだろう




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