□未熟なふたり
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最近よく、俺のところに来る『あれ』。


……懐かれたか?






ぱたぱた。
小さな羽音をさせて、
俺の、すぐ側に下りて来た、キイロイトリ。


ピィピィ。
機嫌よく鳴いたそいつを、人差し指でちょんっとこつく。


「はぁ…。なんでお前、いつも来るんだよ。」



首を傾げてこちらを見る、黒の瞳。

その色が、こいつのムカつく飼い主と重なった。



「っ、……ばぁか。」



向ける相手のいない言葉。
八つ当たりの様に、掌に載せたそいつに言ってみる。


ふわふわ、
柔らかい羽毛に、指先で触れて、その温かさに自然と顔が綻ぶ。



「ハヤトー、ハヤト」

「……んだよ。」

「アソボッ、アソボッ」

「…遊ぶったって何すんだよ。」


成り立ってしまっている会話に笑って、黄色の頭を少し乱暴に、くしゃりとなぜた。

それが気にいらなかったのか、小さなクチバシが俺の手を突く。



「痛っ!」

「バカーッ。ハヤト、バカッ!」

「あ゙?んだとっ…!」



するり。
手の中から飛び上がった、キイロイトリ。

馬鹿にする様に、俺の頭上をくるくる廻る。



「おまっ…!卑怯だぞ、下りてきやがれ!!」


わざと近づいては、手の間を擦り抜けて、余裕の舞で甲高く鳴く。

その行動が、益々俺のプライドを刺激した。


しまいには、背の高い戸棚の上に止まって、俺の事なんかまるっきり無視。

その横暴さは、飼い主そっくりだ。



「んにゃろう…!」



近くにあった椅子を持って、あのトリのいる戸棚の前に置く。

ぐらぐら揺れつつも椅子の上に立って、キイロイトリに手をのばした。



その時、


「……獄寺。なに、してるの。」

「っえ!ひばりッ…?!」



ぐらり。
椅子が大きく揺れて、反動で後ろに倒れる。


スローモーションのように、遠ざかる天井。
あの憎たらしいトリが、視界の端でピィと鳴く。

次に来る衝撃を思い、ぎゅっと目を瞑った。





だけど、いつまで経っても衝撃は来なくて、代わりにふわりと優しく抱きしめられる感触がした。


そーっと、目を開けると、すぐ側に雲雀の顔。



「ったく…。君は曲芸でもするつもり?」

「っ、……!」



不謹慎だけど。
すっげー不謹慎だけど。

軽々と俺を抱き上げる雲雀を、カッコイイと思ってしまった。








「さんきゅー……。」

「どういたしまして。嵐の守護者が、キズモノになったら大変だからね。」

「……なんか、語弊のありそうな言い方だな。」



END

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