君がため
1ページ/5ページ






「なぁ、雲雀って何が好きなんだ?」






「もちろん、隼人だけど」



「やっ///…違うって!!!」








柔らかな朝の春風。
辺りを優しく包む日差し。



登校には早いこの時間に、二人の囁き声が微かに聞こえる。







――久しぶりに、恋人と学校へ行く。

ささやかだけど、楽しい時間。
そんなタイミングで言われた言葉に、躊躇う事無く返される答え。



朱くなった頬を撫でながら何か不満かと問えば、翡翠色の瞳が見上げてきた。





「食べもんの事だよ…」


「あぁ。…なんだろうね」


「んなっ…教えろよー!!」



「ねぇ、隼人…。――人に頼む時は、そんな事言ったら駄目でしょ」




くつりと笑ってそう言うと、止めていた足を動かした。








勿論、朱い顔した隼人の手を引いて。












――――――――――――――そんな事があったのが、ちょうど半日前。




そして今、屋上から帰って来た僕の目の前には、なぜかとても楽しそうな恋人が居る。



「ひばりー♪帰ろうぜ!!」



「…ちょっと、僕今此処来たんだけど?」


「いーじゃん、いーじゃん!!」






「はぁ。分かったよ…。準備するから待ってて」



「やりー!!」




そんな笑顔で言われたら、断る訳ないでしょ。



身仕度を整えて、急かしてくる隼人の額をこついた。





「なぁ、今日は俺の家来いよ!!夕飯作ってやる」



「ふぅん…。作れるの?」


「なっ…!!当たり前だッ」






――驚いた
自給力はなさそうに見えるのに。




「そう。じゃあ、楽しみにしとくよ」



「おう…っ///」




言いながら、朝の様に手を繋いで学校を出た。






途中、スーパーに寄って何か色々買い込んでいた。
なんでも、メニューはお楽しみらしい。







そういえば――…

「ねぇ。なんで急に、作ってくれるなんて言い出したの?」


「あ、のっ…それは」




「何?……言わないとキスするよ」


「えっ…ちょっ!!」



此処は道の真ん中。
人通りも少ない訳じゃない。




.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ