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□※君がため
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「なぁ、雲雀って何が好きなんだ?」
「もちろん、隼人だけど」
「やっ///…違うって!!!」
柔らかな朝の春風。
辺りを優しく包む日差し。
登校には早いこの時間に、二人の囁き声が微かに聞こえる。
――久しぶりに、恋人と学校へ行く。
ささやかだけど、楽しい時間。
そんなタイミングで言われた言葉に、躊躇う事無く返される答え。
朱くなった頬を撫でながら何か不満かと問えば、翡翠色の瞳が見上げてきた。
「食べもんの事だよ…」
「あぁ。…なんだろうね」
「んなっ…教えろよー!!」
「ねぇ、隼人…。――人に頼む時は、そんな事言ったら駄目でしょ」
くつりと笑ってそう言うと、止めていた足を動かした。
勿論、朱い顔した隼人の手を引いて。
――――――――――――――そんな事があったのが、ちょうど半日前。
そして今、屋上から帰って来た僕の目の前には、なぜかとても楽しそうな恋人が居る。
「ひばりー♪帰ろうぜ!!」
「…ちょっと、僕今此処来たんだけど?」
「いーじゃん、いーじゃん!!」
「はぁ。分かったよ…。準備するから待ってて」
「やりー!!」
そんな笑顔で言われたら、断る訳ないでしょ。
身仕度を整えて、急かしてくる隼人の額をこついた。
「なぁ、今日は俺の家来いよ!!夕飯作ってやる」
「ふぅん…。作れるの?」
「なっ…!!当たり前だッ」
――驚いた
自給力はなさそうに見えるのに。
「そう。じゃあ、楽しみにしとくよ」
「おう…っ///」
言いながら、朝の様に手を繋いで学校を出た。
途中、スーパーに寄って何か色々買い込んでいた。
なんでも、メニューはお楽しみらしい。
そういえば――…
「ねぇ。なんで急に、作ってくれるなんて言い出したの?」
「あ、のっ…それは」
「何?……言わないとキスするよ」
「えっ…ちょっ!!」
此処は道の真ん中。
人通りも少ない訳じゃない。
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