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鬱陶しい梅雨が明けて、初夏の匂いがする。
湿気の残り香を飛ばすように吹く風はカラッとした乾いた風。
「はい、できた」
「ん」
パチンとおでこの上で音がする。
机に足を乗せて椅子を斜めにしながら本を読んでいた獄寺の前髪を、山本はピンで留めた。
クラスメートのいる前ではこんな油断した姿を見せるのを嫌う獄寺だが、二人の時はその反動か緩む。
答えが上の空なのは読書に集中しているせいで、せっかく二人っきりなのに勿体ない!と山本は口をとがらせる(獄寺には見えていない)。
獄寺の後ろの席に座って、山本は腕に突っ伏した。
(相手してくれないしーつまらないしー)
教室のカーテンを揺らす風は意外と涼しくて心地いい。
遠く喧騒が聞こえるだけの教室で、獄寺の本のページをめくる音は山本の眠りを誘うには十分だった。
……………
さっきまで周りをうろうろしていた山本が落ちついて、獄寺は本から視線を上げる。
キョロキョロと見回して振り返るとそこに山本は居た。
小さな寝息が聞こえて、きっと夢でも野球をしてるんだろうと思った。
再び本に視線を落としてきりのいいところまで読み進める。
そして山本が作ったドラッグストアのメンバーズカードをしおり代わりに挟んで本を閉じた。
それを机に置くと、身体を捻って後ろの席で眠る山本を見、手を伸ばして柔らかく山本の頭を撫でた。
(こいつの髪、意外と柔いんだよな…)
「…ん…」
小さな山本の声に、獄寺はビクッと手を引く。
だが山本は横を向いただけですぐに寝息が聞こえた。
(…ふっ、アホな顔して…)
また髪をくしゃくしゃくしゃと撫でた。
……………
頭を撫でられて寝たふり。
薄目を開けて獄寺を見上げて息をのむ。
獄寺がふわりと笑って自分の頭を撫でている。
その表情が優しくて。
(優しくて、)
なんだか特別に感じるのは夕焼けの赤の優しさだろうか。
「―――…帰るぞ、」
軽く獄寺が頭を叩く。
山本は慌てて起き上がる。
「ご、獄寺っ…!」
獄寺は既に鞄を手に。
「寝たふりすんなら、もっとバレないようにやれ」
そうすんなり言い当てて、山本はぐうの音も出なくなってしまった。
『初夏のひととき』
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