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くだらないネタとか、浮かんだ言葉とか。
*
◆みゆきとディーノ
「ごめん、寝てたか?」
「ううん、平気。」
深夜11時。ちょうどパジャマに着替えたところで携帯が鳴った。
サブディスプレイには懐かしいと言っていいほどの名前が表示されていた。
日本とイタリアの時差は8時間。
「みゆき、元気か?」
「うん、特に変わったことはないよ。」
「そうか」
「ディーノは??」
「んー、俺も特に変わんねえ、かな?ちょっと忙しいけどな」
「そっか。」
上辺の近状だけを伝えただけで会話が途切れる。もともと共通の話題なんてなかったし、お互い話を話す側というよりも聞く側だったから、話が途切れるなんてことはざらにあった。別に悲しくはなかった。
こんなに沈黙を気まずく感じることはなかった。
「なんか…久しぶりだな」
「……そうだっけ。」
これ以前に声を聞いたのはもう約一ヶ月ほど前だった。ディーノもきっと覚えているのに白々しく言うから、私も何だか素知らぬふりをしてしまった。
「じゃあな、おやすみ」
「…おやすみ。」
沈黙を破る糸口を見つけられないまま、一ヶ月ぶりの会話はあっさりと終わった。私はぼんやりと、音のしなくなった携帯電話を眺める。
付き合い始めの頃は、電話を切った後すぐにまた掛かってくることもあった。私はそんな彼に呆れる態度をとりながらも、本当に嬉しくって心が満ち足りていた。
いま、手の中の携帯は沈黙を続けている。
久しぶりに声を聞いたせいか、恋しさが蘇ってずきずきと胸を刺した。
いつかこんな風にあんまり会わないことにも慣れて、電話を切った後も寂しく感じなくなって、気がついた時には自然に別れてしまっていたり、するのだろう、か。
そのいつかが来るのがそう遠くない気がして、胸の痛みが、増した。
何も考えたくなくて頭から毛布をかぶってしばらくじっとしていたら、枕の裏で携帯がニ回震えて止まった。
……メール受信の知らせだ。
毛布の中に引っ張りこんでメールを開くと、暗闇に浮かび上がる画面にはたったのニ行。
でもそのニ行はまるで特効薬のように、私の胸の痛みを綺麗に消し去っていった。
FROM ディーノ
SUB 無題
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声聞いたらどうしても会いた
くなった
今、搭乗手続きすませた
―――――
切ないものを、
2009/02/12(Thu) 03:30
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