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くだらないネタとか、浮かんだ言葉とか。



*
◆あやかと骸 



掠めるように触れた指先は、

「うわっ!」
「あやか?」

「ちょ、なにこの手!めっちゃ冷たいやん!」

徐々に冬へと向かうこの季節。コートやマフラーの防寒小物を使うまではいかないが、風や空気は骨に染みるように冷たい。あやかも例に漏れず、厚めのセーターを着ている。

隣を歩く黒曜中の制服を着ている青みがかった髪をした男は制服と迷彩柄のインナーだけで平然としている。
詰め襟からわずかに覗く白い首筋は紙のような色をしているのに。

「むくろ、寒くないの!?」
「…別に」

あやかの剣幕にのけ反るように上体を反らせたままあっさりと答える。
軽く掠めただけなのに、男の指先は氷のように温度がなかった。あやかの腕に鳥肌を浮かせたその手を取ってくるんだ。

あやかの小さな両手には余る男の大きな手。

五本の指はどれも繊細に長く、短く切り揃えられた爪先はうっすら紫色をしていた。

「あったかい手をしていますね」
「…………」

あやかの手を暖かいと分かるのに。
温度を感じていないのだろうか、この男は。

「むくろ、」
「なんでしょう、あやか」

「あやか、むくろが冷たいのは嫌だよ」

風は吹いていない。
けれど冬は近付いている。空気は澄んで空は高くなり、やがて吐き出す息は白く染まるのだろう。
雪が降り出す時期になっても目の前の男は自分を温めることをしないのかも、しれない。

そっと触れる男の滑らかな頬は指先と同じように冷たかった。

「ねぇ、寒くなるんだよ?ちゃんと暖かいカッコ、してね」
「………」

冷たい骸の手が頬に添えられたあやかの暖かい手に重なる。
じわりじわりと温度を吸い取られていくような気がした。


「君は、暖かいですね。」

溶けてしまいそうだ。


薄く薄く、透明に笑う骸の頬がわずかに赤味を帯びたように見えた。



――――――――
感じて。しっかりと、此処にいて。


2008/12/13(Sat) 22:02

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