夢処
□そんな馬鹿げた 夢を視た
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まどろみの中意識を埋めると
綺麗な笑顔で君が立っていて
『好きだ』
そう言うと恥ずかしそうに笑う
『此が好きだと云う感情なのか…』
嬉しそうな声で言うと、君は顔を紅くした
『我輩は嬉しいぞ…』
そう呟き、抱き締め口付ける
『…好きだ…』
言葉で答える代わりに、君は口付けで応えた
『好きだ…』
何回も呟き口付ける
『お前は…言っては呉れないのか…?』
その問いに君は悲しく笑うだけ
『…どうした…?』
突然不安になり声を掛けると
-サァ-
『何だ…此は…ッ』
君は砂の様に消えて…
「ッ!!」
気付くと何時も通りの事務所
「夢、か…」
安心し、ふと横を見ると
「…な、んだ…此は…」
紅く染まって変わり果てた君の姿
「何、故…だ…?」
立ち上がり机に手を着くと、ヌル…とした感触
其れに目を向けると紅く擦れた手形
「…我が、輩が…
殺 し た ? 」
理解し難い闇に支配される
「う…嘘、だ…ッ
我が輩が…違ッ…違うッ!!」
意識の無い内に殺したのかもしれないと考えつつも、自分は殺していないと
もう既に
一生動く事は無い愛しい人を見ながら叫ぶ
「嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…嘘だ…」
其の血の付いた手で自らの髪を掴み、狂った様に呟き続ける
「う、そ…だ…我輩…違ッ…違う…ッ」
でも君は動かなくて…
-バシ-
「ッ!!!」
突然の頭への痛みに目を覚ますと、心配そうな表情の君
「ぇ…?我輩…」
「ネウロ大丈夫…?
相当魘されてたけど…」
額の汗を拭いながら言う君に
「わっ!?」
とてつもない程の安堵感が溢れ抱き締めた
「良かっ、た…ッ」
「…どぉしたの?」
心配そうに訊いて来る君だけど
きっと笑われるから夢の事は話さないでおこう
そう思った
夢に翻弄されるとは…
我が輩もまだまだだな
何も不安等イラナイ
目を開けば君が微笑んでいて呉れる
我が輩は只、安心しておけば良い
君と云うモノは存在しえないのに
そんな馬鹿げた 夢を視た
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