短篇小説『蒼白』

□初夏に残る思い
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初夏に残る思い



「・・・・・」

隣に座ってるヒトの顔を見る

今日も私の隣に居てくれるヒト・・・

「・・・・・」


カサ…


ページを捲る音と空調の音しか聞こえない・・・

私もページを捲る

捲る度に新しい世界が私の中に入ってくる・・・

本の中の世界は不思議な世界・・・

思いを馳せる私は時々手を止めて目を瞑る・・・

・・・・・


カサ…


そして聞こえるのは、一定のペースでページを捲る音・・・

目を開けて横を見る

このヒトはあまり手を止めたりはしない・・・

いつも決まったペースでページを捲り・・・

「・・・・・」

時々私を見てくれる・・・

「・・・・・」

何も言わなくても分かる・・・

・・・先輩はとっても優しい・・・


キーン コーン カーン コーン…


・・・朝礼前のチャイムが鳴る

私は本を閉じて・・・

先輩も本を閉じ・・・積み上げた本の一番上に置く・・・

立ち上がった先輩は

「・・・・・放課後に・・・」

・・・そう言って小さく礼をして、歩いて行く・・・

「はい・・・今日も頑張って下さい・・・」

先に出て行く先輩を見送って・・・私は本を借りる・・・

「・・・ハイ、返却日は明後日ね?」

司書の先生が図書カードを箱にしまって本を渡してくれる・・・

「ありがとうございます・・・」

「今日も頑張って下さいね?」

司書の先生はニッコリ笑って声をかけてくれた・・・

トビラを開けて教室に向かう・・・


ゆたか達と過ごす今日・・・

そして、放課後にまた会う先輩の事を考えながら・・・



私には一緒に居て、楽しいと思うヒトが居る・・・


それは・・・


先輩・・・


小手川先輩・・・
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