短篇小説『蒼白』

□願うなら・・・
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願うなら・・・



今年も夏のお祭りの季節

私の家のお祭りは毎年沢山の町の人が来てくれる

嬉しい事は嬉しい事だけど

人が増えれば増える程、家族である私達の苦労は増える・・・

昔は勝手に遊んでたけど高校生にもなってお父さんや姉さん達に任せて遊びに行くのは憚られる

・・・つかさはあっちでウロウロこっちでウロウロだけどね・・・

屋台の組み立てをやってる中、私達は神社の飾り付けに忙しい

あぁ〜もう!猫の手も借りたい!

・・・と去年は思った



「そこもっと左よ!・・・そう!シワにならない様に気を付けて!」

「・・・・・」

ハシゴに上って作業をしているのは、私でもなければつかさでもない(つかさにこんな事頼んだら怪我するだろうけど・・・)

ましてや姉さん達でもないし、お父さんでもない

「・・・・・」

黙々と作業してくれてるのは

「・・・・・人使いの荒い・・・」

れいだ

何と今年は男手が一人増えたのだ

これまでの経緯を説明するには、何週間か前まで遡らなければならない・・・









・・・・・

「れい君はお祭りを知っているかな?」

「・・・・・(コクリ)」

あのれいの居眠り〜本気寝事件から一ヶ月位経ったある日

れいは週末や休日になると時々私の家に泊まりに来るようになっていた

これは、一人暮らしのれいを心配したお父さんとお母さんが勧めたものだ

れいも最初は遠慮してたけど、最後はお母さんの「夕ご飯も朝ご飯も御馳走するわ〜」という一言で首を縦に振った

私としては最初話を聞いた時驚いた・・・けど


「れいだしね」


その一言で片付いてしまうれいの不思議な魅力

何?


そんな訳でウチによく来るようになったれい

リビングでお茶を飲んでくつろいでいるれいにお父さんが言った

「知っています・・・祭・・・神々を祀る儀式が一般的に開放され、楽しめるようになっている物です・・・」

辞書から引いたような事を言うれい

お父さんはハハハ・・・と笑いながられいを見る

れいは笑われて不思議そうな顔をしてる

「ハハハ・・・意味を聞いてるわけじゃあ無いんだよ いや、悪かったね笑ったりして」

湯のみのお茶を飲み干してお父さんは一息つく

「言いたかったのはね、実は近々我が家でお祭りがあるんだよ」

「・・・祭・・・ですか」

「うん、結構毎年沢山の人が来てくれるんだよ?そこで・・・来週から君達夏休みだろう?出来れば君にもお祭りや家のお手伝いを頼みたいんだよ・・・」

「・・・・・」

「ほら、我が家は女手は有るだろう?でも力仕事がどうしてもね・・・男手が一人位欲しいんだよ 頼めないかな?」

「やります」


即答


「おや?随分快く引き受けてくれるね?」

「ハイ・・・お父さんにはお世話になっていますから・・・俺も・・・何かお礼がしたいです・・・」

(ちなみにれいはお父さんの事を「お父さん」、お母さんの事を「お母さん」と呼ぶ)

「いやいや・・・大した事はしてないし、君は十分私達を助けてくれてるじゃ無いか・・・君を我が家に招いてるのは私達の勝手だしね、自分の家のように居てくれていいんだ 現に、君が居てくれてみきも助かってると言っているよ」

れいは万能の才を生かして、お母さんの手伝いをよくしている

掃除、食事、買い物、家計簿計算・・・etc

何でそんな事までやらせてるのかって事もれいは黙々と手だってくれて・・・

「そうよ〜 私ったられい君にホント色々手伝って貰って・・・感謝しちゃうわ〜」

お母さんが二人の湯のみを片付けながら言う

そう言われたれいは少し恥ずかしそうな顔をして(目を細めただけだけど・・・)

「・・・いえ・・・これからも何でも言ってください・・・」

と、言い顔を伏せる



れい・・・・・可愛い・・・
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