短篇小説『静白』

□トモダチのキモチ
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トモダチのキモチ



「あ、あの!小手川君!!」

「…田村か?」


温室の作業を終え、身の整理をしていた時の事

夕日が差し込むこの温室

田村ひよりの声が聞こえ振り向く


「あ、きょ、今日も作業ッスか?お疲れ様ッス!」

「…まぁ、委員会の仕事だからな」

纏めた髪を一度解く

土が付いたりしていないかを確認して再び結ぶ


「……」

「……」


水をやったばかりのキキョウの花がキラキラと光る

俺は髪を結びながら明日は剪定をしよう等と考えていた

「……」

「……」


…それにしても

田村は何をしに来たのだろうか

小早川や岩崎やれいはの友人であり

俺の友人でもある彼女

放課後、授業が終わった後彼女は部活に向かった筈だ

今は最終下校時刻を多少過ぎ、帰宅の波は収まりかけている時間

そんな中に田村ひよりは居る



「…何か用事か?」


……




「…何か用事か?」

「うぇ!?よ、用事と言うかッスね!?」

突如、小手川君に声をかけられ、返事が裏返ってしまった

私は顔の前で手をブンブン振って、ごまかす

「…?」

「えっとッス、ねぇ…」

中々口に出せない


一人活動が長引いてしまい

一人帰る途中温室を除き

彼を見つけて

一緒に帰りたいと思ってしまったのだから


「……」

「……ッ」

私は、まるで自分の黒歴史ノートを見られた時と同じ位に恥ずかしいと感じていた

小手川君を前にして言葉が上手く出てこない

小早川さん達を前にした時の様な軽口が言えなくなる


「…田村」

「あ、な、何?」

私は結局言えなかった

小手川君はシャツを正し、上着を脇に挟んで鞄を持ち歩き始めていた

「帰るぞ」

「は、はいッス…」
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