短篇小説『静白』

□リクエスト小説 みさお夢
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リクエスト小説 みさお夢



嗚呼面倒くさい…


「おっ!はっ!よおぉぉぉう!小手川!」


五月蝿く、明るく、煩わしく、鬱陶しい

そして、何より距離が近い


「あれ?……無視すんなってヴぁ」

「……」

「おはよー!」

「……」

「お!は!よー!!」

「五月蝿い!!」


眼前に迫っていた日下部みさおに向かって吠える

少しよろけた日下部は腕を振ってバランスを取ると八重歯を見せて笑った

「おー!やっと反応してくれたなー」

「五月蝿い!朝から何なんだ!」

「何だぁ?って挨拶に決まってんじゃん!」

「だから…近いと言っているのだ!」

ニコニコと笑顔を押しつける日下部を尻眼に、俺は花壇へ向かう

落ちた葉や塵を集める為だ

「なぁー小手川ー?アタシは先輩なんだじぇー?もう少し敬っても良いんじゃね?」

「お前の様な距離感零の人間に敬意など持てるものか!」

箒を持つ手に思わず力が入る

柄がビキと響いて、俺の感情が昂ぶっている事を再認識した

冷静にならなければ…


「あはは!それは仕方ね―な!ほらほらー小手川ー!おはよー!!」

「……この!壊乱め!!何なんだお前は!?」

冷静にならなければと思った刹那

すぐ横に迫っている日下部

そして合いも変わらず繰り返される挨拶


笑顔





…大声


全てが俺の平穏からかけ離れた存在

「何なんだーって言われるとなー」

日下部はニコニコしながら俺の周りをグルグルと回る

箒で集める筈の葉がチラチラと舞ってイライラと…イライラと……

「ンフフー♪」

と、笑いながら日下部は俺の目の前で腰を落とし、俺を見上げる

上目遣いの日下部を見下して、そのにやけた口から出る言葉を待つ


「私は、小手川のメイドだもんなー」

「誰もお前をメイドにするなど言っていない!!!」


またもや俺は叫ぶ

俺は今、厄介な者に絡まれている
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