長編小説第二集『静白』

□第二章 委員
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「じゃあ今日は身体測定と午後からはクラブ紹介に委員会だからな―、忙しいよ―」


先生が黒板に今日の予定を書いていく

教室は少しざわついていて

周りからは午後のクラブ紹介で興味津々の様だ


「お―い、静かにしてくれ―」

先生が一回言うと静かになる

「兎に角先ずは身体測定からだからな―」

手元に在る身体測定記入カードを見る

身長…体重…座高……

……胸囲

「女子から先に保健室に行って下さいね―」

先生はそう言って教室を出て行った



「岩崎さん、行こう?」

小早川さんが歩み寄って来て言う

「うん…」

私は席を立つ

「小手川さんも行こう?」

小早川さんがれいはさんの方にも声をかけた

私はれいはさんの方を見る


「……」


れいはさんは無表情で身体測定記入カードを見つめていた

…微動だにしない

「…えっと〜…小手川さん?」

小早川さんが不思議そうにれいはさんを呼ぶ

「…え?あ、はい、何でしょう?」

「保健室に一緒に行かないかな…って思ったんだけど…」

小早川さんは笑顔で言う

「え、ええ…ごめんなさい、行きます」

れいはさんは慌てて立ち上がった

「「?」」

…如何したのかな?

「兄さん、行ってくるね」

「…(コクリ)」

れいはさんが小手川君にそう言って、私達は歩きだす



「私身体測定苦手なんですよねー」

小早川さんが言う

……

「岩崎さんも小手川さんも身長在るから良いなー」

「…身長が在っても困る事は在るよ?」

れいはさんが通り過ぎた男子生徒の視線を受けながら言う

「う〜ん…それもあるんだろうけど…でもやっぱりもう少し大きくなりたいですねー」

小早川さんは赤くなりながら言う

「…そう言えば」

私は歩きながられいはさんに思う

「れいはさんと小手川君は身長同じ位ですね…」

初めて二人一緒に会った時も、昨日家の前で会った時も

二人並んだら身長は同じに見えた

「やっぱり双子の人って似るんだねー」

小早川さんがそう言えば…と言う

「…うん、そうだね」

れいはさんは笑顔を見せる

「私が少し高いのかな?兄さんは平均身長だから」

れいはさんが早口に言って、一歩前に出る

「兄さんは私と一緒に居てくれるから、身長吸い取っちゃったのかな?」

クスクス…と静かにれいはさんは笑って、数人の男子生徒が口を開いたまま歩いていった

「へ―…吸収か―」

小早川さんがほわー…と納得したように言う

「……」


…吸収


「おや?着きましたよ?」

れいはさんの声で我に返る

……去年から成長して無い気がする…


…ぺたぺた




―――

――



「う―――し、身長が……今年もこんな…」

「……」


…ぺたぺた…


…今年も…

「…大丈夫…この先、きっとまだまだ成長する…」


半分は…自分に言い聞かせた


「そっそうだよねっ!」

小早川さんは多少持ち直したのか、ヨーシと気合を込めて新たな表情


「あれ?小手川さんは?」

小早川さんが顔を挙げてキョロキョロしている

そう言えばれいはさんが居ない

先に出た筈なのに…

「…?」

…あ

柱の影…そこに束ねられた髪が揺れていた










「……」


…ぺたぺた


「………」


別に気にしてはいない…

…うん


「小手川さ―ん」

小早川さんの声が保健室出口から聞こえる


「……」

私はカードをもう一度見て


「すいません、お待たせしました―」

…笑顔を作って二人の元に向かった


…うう…情けない
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