長編小説第一集『蒼白』


□最終章 せつな
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「・・・みゆきさん、そう言えば凄い論文発表したとか聞いたよ〜?おめでと―」

私は飲んでいたコーヒーをソーサーに置いて、一息つく

「こなた・・・おめでと―って・・・内容知らないの?術後の患者への対応まで細かく研究された、今後の医療界に影響を及ぼすかもしれない論文じゃない」

かがみが呆れた様な表情で私に言う

「そう言うかがみもニュースとか何かの受け売りの癖に〜(ニヤニヤ)」

「う、うっさい・・・兎に角凄いわね、みゆきは・・・この若さで」

赤くなったかがみは、みゆきさんを見る

「そ、それ程の事では・・・確かに沢山の人からお褒めの言葉も頂きましたし、総理大臣からも表彰されましたけど・・・」

謙遜するみゆきさん・・・

「でも、厚生労働大臣すっ飛ばして、内閣総理大臣の表彰でしょ?ネットニュースで見たよ♪みゆきさん賞状持って総理と握手してるとこ」

「あ、あれはとっても緊張しました・・・」

「ゆきちゃんホント凄いね〜、私達と同じ二十六なのに」

つかさがカップスープを飲みながら言う

「いえ、私などまだまだ若輩で・・・たまたま研修医の頃から目を付けて頂いていたので、ラッキーだっただけです」

「でも、友達がこうして立派になってくのは嬉しい物よ」

かがみはそう言って二コリと笑う

まあ、私もみゆきさんが立派になってくれて嬉しい

最近はみゆきさん達、若い医者の意識が変わって来て、どんどん高レベルな医療が出来てるって聞くし

「そうだね〜、私なんか今だに後輩の指導したり、パソコン打ってるかだもん」

それに比べて・・・

私はさっきまでいた職場を思い浮かべた

「それでも、泉さんもこの間発売した作品は大ヒットだったそうじゃないですか?」

「いや〜それ程でも・・・あるかな〜」

「こなたはソッチの才能は天才的だからね・・・」

かがみが苦笑いで言う

「昔から好きだったもんね、こなちゃん・・・アニメとか〜、ゲームとか」

つかさが口をぬぐいながら言う

「そうそう!高校の頃からよくやってたわよね!懐かしいな〜・・・」

かがみが昔を思い出すように言う

「あはは!弁護士かがみの前で昔の痴態を話してしまった〜!」

「そうよ!十八歳未満があの様なゲームを遊ぶのは法律違反よ!これは罰金ね!」

襟の弁護士バッジを光らせながら、笑顔で言うかがみ

「あはは、こなちゃん罰金だって〜」

「ふふ・・・昔からの経験が今のインスピレーションを生むんですね」


四人で笑いながら話す

昔を思い出す・・・

高校時代・・・

陵桜学園の女子高生だった時・・・

あっという間の三年間

楽しかったあの時


「あ、そろそろ行く?確かブクロのホテルだったわよね?」

かがみの声で我に返る

「そうですね・・・ここからだと、タクシーでも一時間以上かかりますし・・」

「電車で行こうよ〜、昔みたいに皆で」

私は腕時計を見る

成程・・・

もう四時過ぎだったんだ

「こなた、行こう?」

かがみが私にコートを渡す

「あ、サンキュ・・・あっ」

コートを投げ渡された時、コートのポケットからヒラヒラと落ちたモノ・・・

「おっと・・・はい、こなた」

「重ね重ねサンキュ、かがみ」

私は受け取ったハガキを見る



陵桜学園第八回○代目卒業生同窓会のお知らせ



ちゃんと持ってた・・・

鞄に入れて・・・よし

「そんじゃ、行こうか?みんな」

私は伝票を持って席を立った
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