読み物
□過去拍手文
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小倉百人一首@
(ギン→乱)
君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
乱菊と会わんかったら、ここで生きることに執着なんてしてへん。どーでもええと思っとった。
乱菊が僕より先に死ぬことはない。
どんなことがあっても必ず僕が護るから。
せやけど、僕が乱菊より先に逝ってしもたら…乱菊はどないなんのや。
乱菊はキレイや。どこぞの誰とも知らん奴に、執拗に迫られるかもしれん。
乱菊は強いけど、それ以上に強い敵もおる。そいつらに傷付けられるかもしれん。殺されてまうかもわからん。
『大切な人おると、死ぬん怖なるやろ。』
昔は、僕がいなくなった後、乱菊の身がどうなるかを思うと怖かった。
今は、僕がいなくなった後、乱菊の心がどうなるかを思うと、とても怖い。
僕は情けない奴や。
一番怖いのは僕のおらん世界で、他の奴と幸せになった乱が、僕のことを忘れてしまうこと…。
そんなん堪弁してや。死んでも耐えられんわ。
君を護るため、共に在るため、僕という存在をその心に残すため、僕は刀を取る。
――君に逢うためやったら、以前は死んでも惜しないと思とった命さえ、今は長くあってほしいと思うようになっとった――